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強面虎獣人と甘い恋  作者: Latte


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8 sideアドルフ

アリスの涙と微笑み、そして俺の言葉に対する反応を目の当たりにして、胸の奥がじんわりと温かくなった。俺の「俺に婚約者はいない」という一言で、アリスの張り詰めていた糸がぷつりと切れたのが分かった。彼女の表情が、少しずつ安堵と恥ずかしさに変わっていく。


アリスは慌てて身を離し、服を手繰り寄せる。その仕草があまりにも可愛くて、思わず顔を背けた。俺の上着をそっとかけると、ダボダボの布に包まれたアリスが、まるで俺のものだと主張しているように見えて、胸が高鳴る。申し訳ないのに嬉しいなんてアリスに失礼だよな。そう思いつつも、口元が緩むのを止められず、隠すように手で覆った。


「すまない、乱暴をするつもりはなかったんだ。でも……他の男と話している姿を見て、理性が効かなくなって。俺がお前を番と認めてしまったから。」


尻尾も耳も、しゅんと垂れる。それは本当に申し訳ないし、決してやってはいけないことだった。けれど、アリスは微笑みながら「番?」と首を傾げる。


「知らないのか?」

「はい、田舎育ちで私の村には獣人がいなかったもので……」

「獣人は唯一と認めた人を番とする。心から求める人が現れたら本能的に捕まえ、囲い、死ぬまでその愛を貫く。もはや呪いだな。俺はつがいなんか持つつもりはなかった。俺に番とされるなんてお前も不運としか……」


その言葉をアリスが遮り、真剣な眼差しで俺を見つめてくる。「それは、私がこの先もアドルフ様のそばにいてもいいということでしょうか?」


その問いに、俺は申し訳なさそうにしながらも、しっかりと頷いた。「お前がいなければ、俺は狂ってしまう。すまない、もう離せない。」


自分の独占欲や執着を恥じる気持ちもあったが、それ以上にアリスを失う恐怖の方が大きかった。今まで一人でも大丈夫だったはずなのに、今はアリスのいない未来を思い描けないほど依存している。眉を寄せて苦しそうにしていると、アリスがガバッと抱きついてくる。


「嬉しい……こんな幸せなこと、他にありません。アドルフ様の隣にいてもいいなんて、この想いを捨てなくていいなんて、夢のようです。願うことすら罪だと思っていたのに、貴方の隣にいて願わずにはいられなかったんです。ずっとそばにいたいと……」


アリスの涙は、今度は悲しみではなく、嬉しさの涙だった。その姿を見て、俺の目頭も熱くなる。こんなにも素直に想いをぶつけてくれるアリスが、愛おしくてたまらない。


「ほんとう、か?」


疑うように問いかけてしまう。自分のような男の思いを受け止めてくれる人がいるなんて、まだ信じきれなかった。


アリスはムッとした顔で「ずっと伝え続けてました!アドルフ様が好きだと!!伝わってなかったんですか?」と眉を釣り上げる。


慌てて手を振る。「い、いやそうじゃないが、まだ信じられなくて……醜い俺の思いを受け止めてくれる人がいるなんて。政略的な婚約ですら拒否されていた俺が、愛する人に愛されるなんて……」


“愛する人”――その言葉を口にした瞬間、アリスがすりっと胸に擦り寄ってくる。俺は思わず喉を鳴らしてしまう。「それはまずい。」

それは求愛行動だ・・・



再び理性が吹き飛ぶ。

こいつが欲しい。いますが欲しい。

俺が大切にする。

誰よりも甘やかして、ドロドロにして、俺が最後まで責任を取る。

だから今すぐ俺のものになってくれ。

俺のものだって刻ませてくれ。


触れた太ももと胸は柔らかくて、大きく息を吸うと甘い甘い匂いがさらに俺を誘ってきた。


「ちょ、ちょっと待ってください!!あっ、こ、ここで初めてはちょっと!!」


アリスの言葉に、ピタッと動きを止める。理性を総動員してどうにか踏みとどまる。


そっとアリスから離れ、深く息をつく。落ち着け、落ち着け。大切にしなくちゃ、こんなところ他のオスに見られたりなんかしたら相手を殺してしまう。


「そう、だな。はじめては……ちゃんと巣に連れて帰ってしなくちゃな。」


そのままアリスをひょいと抱き上げると、迷いなく歩き出した。


「ど、どこに行くんですか!?」


「俺の邸。」


乱暴に書庫のドアと蹴り開け、早足で歩く。


アリスは慌てて首に腕を回し、ひしっとしがみついてくる。

そんな仕草にすら理性が飛びそうになる。


「ひっ!!」

すれ違う人が俺を見て悲鳴をあげる。多分今までにないほど周りを威嚇している自信がある。匂いつけもしていない番を外に出しているのだから仕方ない。早く巣に戻り俺の匂いをつけ終わるまで落ち着かないだろう。


郊外にある邸まで走るようにして戻り、乱暴にドアを開け、真っ直ぐに寝室に向かった。

ほとんど使われていない邸だが、両親から必要な時が来るだろうと言われ貰い受けていた。

ここがあってよかった。ここなら安心してアリスと愛を交わせる。


月明かりに照らされたその部屋には、大きなベッドが一つだけが静かに佇んでいる。アドルフは優しく、けれどどこか急ぐような動作でアリスをベッドの上にそっと降ろした。


「あ、あの……お風呂……」


アリスが恥ずかしそうに訴えるが、その要望には応えてあげられない。


「悪い……もう、我慢できそうにない。」


理性と本能がせめぎあうなか、アリスの手をそっと握る。アリスは不安と期待が入り混じったまま、アドルフを見つめ返した。



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