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強面虎獣人と甘い恋  作者: Latte


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7 sideアドルフ

毎日が幸せだった。言葉にしなくても、俺の想いは伝わっていると信じていた。自分の瞳の色のアクセサリーを贈り、尻尾は毎日のようにアリスに巻き付いていた。これ以上何を望む必要がある?そう思い込んでいた。


だが、ある日突然、アリスが姿を見せなくなった。


最初は仕事が忙しいのかと思った。だが、日が経つごとに不安が膨らんでいく。俺が何かしたのか?嫌われたのか?理由が分からず、胸の奥がざわつく。書庫で待ち続けても、アリスは現れない。夜も眠れず、食事も喉を通らない。


(なぜだ……俺が何をした?)


思い当たる節はない。昨日まで、アリスはいつも通りだった。笑顔で、優しくて、俺の隣にいてくれた。何も変わらない日常が、突然終わりを告げた。


日々が過ぎるごとに、俺の心は焦りと苛立ちで満たされていった。アリスのいない書庫は、こんなにも静かで、こんなにも冷たい場所だったのかと、今さら思い知らされる。自分の中に渦巻く後悔と焦燥。もっと素直に気持ちを伝えていれば、もっと言葉にしていれば、こんな思いをしなくて済んだのかもしれない。


(俺は、あいつに何をしてやれた?ただ自分の気持ちを押し付けて、満足していただけじゃないのか……)


アリスの笑顔や、手に巻き付けた尻尾の感触が、今はやけに遠く感じる。胸の奥にぽっかりと穴が空いたような、そんな虚しさだけが残った。


ある日、昼食時にアリスの姿を見かけた。遠くからでも分かる、俺を避けるような態度。胸が締め付けられる。思わず強く腕を掴み、問い詰めてしまう。


「……なんで突然来なくなった。」


アリスは涙を浮かべ、腕を振り払う。「申し訳ありません。……仕事中ですので」


その冷たい態度に、心が引き裂かれる。だが、俺は諦めきれず、静かに言葉を紡ぐ。「待ってる。あの場所で、お前を待ってる」


その後もアリスは俺を避け続けた。焦りと苛立ち、そしてどうしようもない独占欲が渦巻く。俺のものだと信じていたのに、なぜ離れていく?


そんな時、見知らぬ男がアリスに声をかけている場面に出くわした。胸の奥が一気に煮えたぎる。理性が吹き飛び、怒りが口を突いて出る。


「おい、俺のものに手出してんじゃねぇ。殺すぞ。」


男は青ざめて逃げていった。だが、アリスの前でこんな姿を見せた自分に、自己嫌悪と同時にどうしようもない執着が湧き上がる。アリスの腕を強く引き、無理やり書庫へ連れていく。


「……あいつが好きなのか?あいつにしたのか!?だったらなんで俺に優しくしたんだ!なんで俺に好きだなんて言ったんだ!?ふざけんな!俺から逃げるつもりか!?」


声は低く唸り、牙が剥き出しになる。怒りと不安、独占欲が混じり合い、理性が保てない。尻尾も耳も逆立ち、獣の本能が溢れ出す。


「もうお前は俺のものだ、俺がそう決めた。」


叫ぶようにしてそう伝えた。こんな脅すような言い方をしてしまうが、頼むから拒絶しないでくれてそう願わずにはいられない。普段は強気な俺が、今にも泣き出しそうなほど動揺していた。


アリスを押し倒し、首筋を舐める。滑らかな肌に舌が触れ、酔いそうなほど甘い匂いがした。鋭い爪でアリスの服を裂く。


「残念だったな、俺みたいなやつに捕まって。でもお前が悪いんだ。俺に好きだなんて言うから、俺みたいなやつに温もりを教えるから」


自嘲気味に笑みをこぼす。もう、嫌われてもいい。嫌われても離せない。そうだ、既成事実を作ろう。このまま子供を作って逃げられなくして閉じ込めてやろう。仄暗い企みが浮き上がる。


「なんでそんなこと言うんですか!!あなたが好きだと何度も何度も言ったでしょ!!アドルフ様ほど私が恋い慕う人はいません!!私が愛する人を卑下するような言い方なんて絶対しないでください!それに私を捨てるのはあなたでしょう!?婚約者がいる人にひっそりと会い続けるなんて私にはできません!私にできることはあなたの足枷にならないようひっそりと退場することだけです!!こんなに胸が張り裂けそうなのに……他の人なんて目に入るはずない。貴方しか愛せないのに……でも愛人になるのも無理……貴方を誰かと分け合うなんて私にはできない……」


アリスの叫びと涙に、俺の理性が急速に戻ってきた。


「す、すまない、泣かせるつもりはなかった。」


そっとアリスを抱き起こし、背中をとんとんと叩く。不器用な優しさしかできない自分がもどかしい。


「それと婚約者とは?俺に婚約者はいないぞ。」


何がどうしてそんな話が出てくるのかわからない。


「へっ?」


アリスが呆然とした顔でこちらを見る。俺もそれを呆然と見つめる。


「お前と出会う直前に、相手の懇願で破棄になった。俺と婚約なんて死ぬほど嫌なんだと。」


その瞬間、張り詰めていた空気が一気に緩む。アリスの涙が止まり、俺もようやく息ができた気がした。

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