第七十八話 対魔族①
【リンネ】side
「俺の所に10体か。まあ三級魔族程度なら何とかなるか」
「三級魔族程度だと?たかだか人間ごときが、ずいぶんと偉そうだな。人間など、我だけでも一国を亡ぼせるほど脆弱なくせに強がりおって。後悔して死ぬがいい」
「エヴァおばさんの話なら、三級魔族程度なら問題ないらしいんだがな。まあいい、相手になってやるからかかってこい」
「本当に生意気な人間だな」
リンネは限界まで身体強化を使い、さらに血液操作で表皮を固くし竜化では翼以外にも拳をドラゴンへと変化させる。
まずは最初に言葉を発した魔族がリンネとの距離を一瞬で詰め、拳に魔力を集中させるとその拳で殴りつけてきた。
馬鹿正直に受ける必要も無いのでその拳を躱し、魔族の背面へと移動した。
「ほお。生意気な口を叩くだけあって、少しはまともに動けるようだな。しかし少し速いだけでどうにかなると思うなよ」
そう言うと魔族は再度リンネとの距離を詰めると、今度は連打をリンネに放つ。
全部を避けるのはさすがに難しいので、避けれない拳に関しては手のひらで受け止めた。
そのラッシュが一分ほど続くと、その魔族にも若干の焦りが出てきたのだ。
「何故一発も当たらんのだ!?人間ごときが何故、吾輩の拳を見切っておるのだ!?」
「何故って言われてもな。お前より強い奴を知ってるからな。そいつに比べればずいぶんと鈍間だぞ」
「鈍間だと…。ふざけるな人間!おいお前たち、お前たちも一緒に攻撃しろ!」
「ったく、魔族の癖に人間相手に増援依頼か?変われよ、俺様がそいつを殺してやる」
「相手の力も分からんのか!だからお前はいつまでたっても三級魔族なんだ!」
「本当に情けない奴だな。おい人間、俺様がお前を殺してやる。光栄に思え」
「っち、バカが!」
最初に相手をしていた魔族は、今度は一瞬で距離を取り、一旦戦線を離脱した。
その代わりに出てきた別の魔族だが、先ほどの魔族と比べても大差が無さそうに見えるのだが、気のせいだろうか?
そんな事を考えていると、その魔族も一瞬で間合いを詰めて殴り掛かってきた。
「魔族って言うのは殴るしか能がない脳筋なのか?それにさっきの奴と変わらないじゃないか。これなら纏めて相手しても大丈夫だぞ」
リンネがそんな事を言っていると、遠くからドラゴンブレスに似た魔砲撃がリンネに襲い掛かってきた。
リンネはそんな魔砲撃を腕を振りかき消すと、その魔砲撃を放った魔族があり得ないと言った顔になっている。
「今のは吾輩の最大火力の魔砲撃だぞ。それをそんなに簡単にかき消すなど、お前は本当に人間か?」
「失礼な奴だな。俺は正真正銘普通の人間だぞ」
「おい!邪魔するんじゃねえ!今は俺様がこいつとやってるところだぞ!」
「お前のような人間を普通とは言わん。それと、お前の攻撃を防ぎながら吾輩の最大火力魔砲撃を簡単に消し去る人間に、お前だけで勝てるなどと思っているのか?」
「うるせえな!こいつは俺の獲物なんだよ!手を出すんじゃねえ!」
そう言いながらも、目の前の魔族はラッシュを繰り広げ、永遠と拳を放ち続けている。
いい加減避けるのも受けるのも面倒になって来たので、右手に力を込めて思いっきり殴りつけた。
その一撃は魔族の右の拳とぶつかり、その一撃で目の前にいる魔族の右腕が吹き飛んだ。
「ぐあぁぁぁ!」
右腕が吹き飛ぶと魔族のラッシュは止まり、吹き飛んだ肩の根本らへんを左手で抑えている。
今の一撃で、リンネの力が魔族に通用することはわかり、クロエたちの所にも魔族が行っていることを考えると、リンネは目の前の魔族の首を手刀で跳ね飛ばした。
「っち!だからお前だけでは勝てんと言っただろうが。おいお前たち、全員で一斉に攻撃するぞ!」
最初に交戦した魔族がそう言うと、残っている9体の魔族が同時に、先ほどの魔砲撃をリンネに向けて放った。
その魔砲撃をリンネは避ける事も無く、独楽のように回転しながら全てをかき消した。
そして近くにいる魔族から順に首を手刀で跳ね飛ばし、最後には最初に交戦した魔族が残った。
「勇者でもない人間に、こうもあっさりとやられるとはな。しかし世界樹を守るユグドラシルの一族を葬る事には成功した。これで魔神様がこちらの世界に来る準備も整った。あとはせいぜい、短い人生を楽しむがいい」
最後の魔族は恐ろしい事を口にしていたが、それを言い終えると自分で自分の首を落としたのだ。
「ユグドラシルの一族、つまりはリフレの一族を葬っただと?それに魔神がこの世界に来る準備が終わっただと?とりあえず、エルシーなら三級魔族は問題無いだろうから、先ずはリフレに合流するか」
こうして、10体の三級魔族を倒し終えたリンネは、そのままリフレたちの戦場へと向かったのだ。
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