第七十六話 いい日旅立ち
「なあクロエ、俺たちはどこに向かうんだ?」
「言ってなかったっすかリンネ君。私たちの目的地は勇者ミヤビ・ルルメルク生誕の地とされてる、幻想都市【ルルメルク】っすよ」
「ルルメルク?勇者と同じ名前だな」
「幻想都市ルルメルクの住人は、全てルルメルクの一族と言われてるっす。でも、誰一人としてその場所を知らないっす。でも、数々の文献を調べた結果、一つの真実が分かったっすよ」
「なんなんだそれは?」
「歴代勇者は全てルルメルクに関係してるっす。今の様にルルメルクが勇者の時もあれば、ルルメルクの子供が勇者だった時もあるっす。歴代勇者を調べると、そこには必ずルルメルクの名が出てくるっす」
「それはまた、凄い一族なんだな。それで、その幻想都市ルルメルクの場所に目星は付いているのか?」
「無いっす。でも、その幻想都市ルルメルクを知っているかもしれない可能性がある種族はいるっす」
「誰なんだそれは?」
「誰と言うかっすね、全知と呼ばれている妖精族っす。妖精族は長い時間を生きてるっす。それならルルメルクに関する知識もある可能性があるっす」
「なんじゃ、ファータに用事があったのか?」
「ん?ファータって誰なんだシャロン?」
「ファータは我と同じ太古の守り人、現妖精族長じゃよ」
「妖精族にも太古は存在するのか?」
「うむ。太古の妖精族もまた、太古の龍族と同格の存在じゃ。それで、そのファータに用があるのか?」
「シャロンさんは妖精族がどこに居るのか知ってるっすか?」
「あやつは定住などしておらんでのう。所在を正確に把握するのは難しいのじゃが、太古の妖精族の居場所は知っておるぞ」
「太古の妖精族がどこに居るのか知ってるっすか!?」
「太古のいる場所はある程度知っておるぞ。相手の動向にも目を向ける為にも、居場所を知っておくのも必要であろう」
「それで、太古の妖精族はどこに居るっすか?」
「世界最大の大森林、グリーフォレント大森林じゃ」
「グリーフォレント大森林っすか。それってここじゃないっすか?」
「そうじゃの。世界の8割の土地はグリーフォレント大森林だからのう。中心に世界樹が立ちそびえその周りにはいくつもの種族が住みついておる。太古の妖精族はその世界樹の頂上におるのじゃ」
「なあリフレ、世界樹って言えばハイエルフの国があるところじゃないか?」
「そうですね、そう言えばシルフさんがそんな事を言っていましたね」
「なんじゃ、おぬしらユグドラシル神国の事を知っておるのか?」
「私のお母さんの旧姓がシャルル・ツー・ユグドラシルらしいのですよ」
「おぬし、ユグドラシルの一族だったのか!?」
「一応そうなるらしいですよ。でもお母さんもすでに国を出て、今ではユグドラシルの名は捨てていましたよ」
「ユグドラシルと言えば、ハイエルフでも最高位の一族じゃぞ。それこそエルフからしてみれば神のような存在」
「まあ、私は私ですから」
「まあ良い。では世界樹が目的地で良いのだな?普通に歩けば数年はかかるがどうするのじゃ?」
「転移魔法具もあるっすけど、あくまで双方に魔法具を置く必要があるので転移は無理っす。なので、飛んで最短距離で進むっす」
「うむ、それであればそうじゃな、二週間もあれば着くであろう」
「おい、ちょっと待たないか!私はお前らみたいな規格外の化け物じゃない!空なんて飛べないからな!」
「クロエちゃん、さすがに私も飛行系魔法は使えないよ」
リンネ・シャロン・クロエは竜化で飛行は問題ない。
エルシーは相変わらず空中にアクアで足場を作って空を駆ける事が出来る。
リフレも空中歩行で空中の移動は問題ない。
しかし、バーバリアン王国の魔法師帝のシオンとクロエの幼馴染のイミルは空を飛ぶことは出来ない。
「なんじゃ、そんな事か」
『竜神』
シャロンは全身を黄金に輝かせながらドラゴンへと変身した。
竜神は竜化の最上位版で、竜人としては最上位の魔法だ。
「ほれ、我の背中に乗るがいい。おぬしらの実力なら振り落とされることも無いじゃろう」
「そう言う事なら…」
「空の旅とか楽しみですね」
シオンは渋々、イミルはルンルンとシャロンの背中に乗る。
シオンはクロエたちの事を化け物扱いはしているが、シオンも全属性40万とジーナと同等まで力をつけている。
さらには元々持っている戦闘センスもあり、接近戦の戦闘能力だけで言えば究極魔法師団で№3の実力だ。
究極魔法師団の団員の各役割は大まかに、接近戦がリンネ・エルシー・シオン。
中距離支援がシャロン・イミルで、遠距離がクロエで、回復にリフレだ。
リフレも攻撃魔法はあるが、基本的に範囲が大きく味方にも影響が大きい為、回復がメインだ。
シャロンは接近戦も出来るが、リンネ・エルシー・シオンには劣る。
それに加え、ドラゴンのブレスと同等の魔法撃を手からも出す事が出来るようになり、さらに連射も可能の為、中距離からの支援をメインとする。
イミルは戦闘経験も少ない為、基本的にはシャロン同様に中距離からの支援だ。
クロエはバランスがよく万能だが、遠距離魔法に加え遠距離からの魔法具も多数使える為、さらに全体に指示も出せるように遠距離だ。
究極魔法師団は非常にバランスが取れ、さらには個人の力も非常に高い、人類では最高の一団だ。
そんな一団に、まさかの事態が訪れるなど、この時のリンネたちは思いもしなかった。
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