第六十五話 中央都
「さてと、エヴァおばさんに色々と親父の話も聞けたし、そろそろホロって奴のとこにでも行くか?」
「そう言えば、それが目的だったな。すっかり忘れてたぞ」
「エルシーは何も考えて無いんか?」
「失礼だぞリンネ!私だって色々と考えてるんだぞ」
「悪かったよ。それでどうする?今から向かうか?」
「そうだな、私も早くシルビアン王国に帰りたいし、さっさとそのホロって奴を倒しに行くか」
「わかった。じゃあちゃっちゃと終わらせに行こうか」
こうして、リンネとエルシーとリフレの三人はノンヘルン魔人領の中央都へと向かった。
ノンヘルン魔人領は広く、ヴァンパイア族の住む集落から中央都までは歩けば数カ月の道のりだ。
しかし、空中を移動出来るリンネたちにしてみれば、約五日の距離だ。
最初はファウストもついて来ると言っていたが、同じ速度での移動も難しく、結果三人で向かう事になった。
「なあリンネ、私は領主のホロって奴をぶっ飛ばせばいいんだよな?」
「ああ、ヴァンパイア族であるエルシーが一番の適任だろうからな」
「それで、そのホロって奴をぶっ飛ばした後はどうするんだ?」
「ん?そう言えば今回は調査が目的だったな。領主を倒すのはまずいか?」
「大丈夫ですよ二人とも。集落を出る前に国王様には連絡しておきましたから。現領主に勝てる力があるなら、倒しても良いそうですよ。それと、事後の処理については私に一任されましたので、ホロさんの態度次第でどうするか決めますよ」
「さすがリフレだな。本当にたよりになるな」
「助かったぞリフレ!じゃあ私は何も考えずにホロをぶっ飛ばせば良いんだな」
「何も考えないのはダメですよエルシーさん。殺さない様にお願いしますね」
「わかった!そこだけは気を付けるぞ!」
そんな話をしながら移動をしながら、五日目の夜には中央都へ到着した。
本来は検問を通過しないといけないのだが、人間・ハイエルフ・ヴァンパイア族では時間もかかってしまいそうなので、空から通過することにした。
そして中央都に入ると、そこでは様々な種族が生活をしていた。
一番多くみられるのは鬼人だ。
現領主の魔王ホロが鬼人なのだから、それは当然だろう。
他にも鳥獣族や小人族など、それは様々だ。
しかしどこを見回してもヴァンパイア族だけは存在しない。
ファウストから聞いてはいたが、エヴァからホロに代替わりした時点でホロがヴァンパイア族を追い出していたようだ。
なので、現在中央都はヴァンパイア族以外の種族が生活をしている。
「なあリンネ、ホロって奴がどこにいるのか知っているか?」
「さあ?まあでも領主なんだから一番デカい家に住んでるんじゃないか?」
「それで、その一番デカい家はどこにあるんだ?」
「さあ?」
「二人とも、何も聞いてこなかったのですか?ホロさんの屋敷は中央都の中心ですよ。大通りは全て中心に向かって整備されているので、大通りを中心に向かって進めばホロさんの屋敷に着きますよ」
「助かったぞリフレ!よし、じゃあさっそく向かうとするか!」
真面目なリフレがファウストから情報を聞いてもらっていたおかげで、リンネたちは苦労することもなくホロの屋敷へと着いた。
そしてホロの屋敷の前に到着するとエルシーが大きく息を吸い、大きな声で叫んだ。
「ホロー!!出てきやがれー!私と決闘だー!!」
やっぱりアホの子エルシーは、本当に何も考えずに正面突破をしようとしていた。
しかし、今回はエルシーの叫びに反応した者が出てきた。
「誰だおま…!!!エヴァ・スカーレット!!!!ホっ、ホロ様!!!」
ドアから出てきた屈強な大男。
大きな角が一本生えていたのでおそらく鬼人だろう。
その大男がエルシーを見るなりすぐに踵を返し、屋敷の中へと走っていった。
そして、ものの数分後に大男数人を引き連れて、一人の小柄な少女が現れた。
雪の様に白い肌にピンクのショートカットの髪。
その髪の隙間から二本の白い角。
随分と可愛らしい雰囲気ではあるが、その瞳は酷く荒んでいる。
どこを向いているのかもわからない大きな黒い瞳からは生気も感じられず、その可愛らしい雰囲気をその瞳だけで全て台無しにしている。
「今更何をしに来たのエヴァ・スカーレット。私は今、人間の世界を征服する為に忙しいんだけど。引退した貴女が、今更文句でも言いに来たの?」
その発言から、その少女がホロだと言うのはわかった。
確かに強者のオーラは発しているし、周りの大男達に比べれば力も数段強そうだ。
しかし、予想外に幼い見た目についついエルシーも言葉を発してしまった。
「お前がホロか?ずいぶんとちんちくりんなんだな。魔王って聞いて来たから、もっと強そうだと思ったんだが」
「何を言っているのエヴァ・スカーレット?私は小桜種の鬼人。見た目は小さいままだけど、これでも数百年生きてる鬼人。そんなの貴女も知っているでしょ?」
「悪いな。私の名前はエルシー・スカーレット。エヴァ・スカーレットは私のママだ」
「貴女がエヴァ・スカーレットの娘?そう、ずいぶんとそっくりなのね。それで、そのエヴァ・スカーレットの娘が私に何の用があるの?」
「私の名前はエルシーだ!私はシルビアン王国宮廷魔法師団。ノンヘルン魔人領が最近人間国家の侵略が多くなってきたからその調査だ。だが難しい事を考えるのは面倒だから、とりあえずお前をぶっ飛ばす!」
「五月蠅い小娘ね。それで、貴女が魔王の私をぶっ飛ばす?何の冗談かしら?エヴァ・スカーレットならともかく、その娘如きに遅れを取るわけがないでしょ?まあ良いわ。人間を支配する為にも人間の魔法師の力も見ておきたかったしね。ほらおいで、エヴァ・スカーレットの娘」
「舐めやがって!じゃあ遠慮なく行かせてもらうからな!」
こうして、エルシーとホロの決闘は始まったのだ。
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