第六十四話 最強
「んん。あれ?私気絶しちゃってた?」
「悪いエヴァおばさん。加減もせずに思いっきり殴って」
辺りを見回してみると、いたるところにクレーターが出来ていた。
更には向こう数百メートルにかけて森に一本道が出来たように、綺麗に木が消滅していた。
「ああ、大丈夫だよリンネちゃん。どうやらリンネちゃんの一撃で私は数百メートルと飛ばされたみたいだね」
「ああ、本当に悪かった」
「だから大丈夫だって。それにしても、リンネちゃんは本当に化け物だね。これでも私って、実は世界最強クラスなんだけどね。私と同等以上にやり合えるのなんてシャルルぐらいだと思ってたけど、リンネちゃんはそれ以上だね」
「ちょっと待ってくださいエヴァおばさん。シャルルってお母さんですか?」
「そうだよリフレちゃん」
「お母さんがエヴァおばさんと同じぐらい強いのですか?」
「あれ?知らなかった?まあでも、私は接近戦でシャルルは広範囲魔法だから、直接やり合った事は殆どないよ。それぞれ得意分野は違うからね。でもシャルルを怒らせたら国の10や20は簡単に滅ぶよ」
「まったく知りませんでしたよ。それにしても国の10や20って。お母さんもずいぶんと規格外な人なんですね」
「私は個人では最強と思ってたけど、それもリンネちゃんに負けちゃったからしね」
「なあエヴァおばさん。一つ聞きたい事があるんだがいいか?」
「どうしたのリンネちゃん?」
「ノンノ村ってのはいったい何なんだ?ハイエルフの王族に元魔王に、ただの田舎村と呼ぶには不自然過ぎないか?」
「ああ、それ?ノンノ村って言うのは私とシャルルが原因で出来た村だよ」
「エヴァおばさんとシャルルおばさんが原因?」
「そうだよ。さっき直接やり合った事は殆どないって言ったけど、あくまで殆どね。過去に二回だけ大きくもめた事があったんだよ」
「何が原因でもめたんだ?」
「ん~まあ昔の事だし、もう言ってもいいかな。私とシャルルは昔、同じ人を好きになったんだよね。それで、その人を取り合う為に二回ほど真剣にやりあったんだよ。一回目はその決着がつかなくて、二回目はその好きな人に仲裁される形で終わったんだ。その後、その好きな人がどっちも選べないって言うから私たち三人で暮らし始めたんだよね」
「つまりは恋敵って奴だったんだな」
「そうそう。で、三人で暮らしているとその後に私の旦那とシャルルの旦那が求婚に来て、その好きだった人が私たちの方を向いてない事も分かったし、その求婚も凄く真剣で私もシャルルも今の旦那と結婚したんだ。そのあとは、まあ色々と知り合いも増えて、いつの間にか村が出来ちゃってたんだよね」
「エヴァおばさんとシャルルおばさんに好かれてたなんて、その人は随分と良い男だったんだな。その男は今はどうしてるんだ?」
「さあ?旅に出るって言って出て行ってからは、一回しか帰って来てないからね。その一回もリンネちゃんを置いたらすぐにどっかに行っちゃったしね」
「ちょっと待て。俺を置いて行った?」
「そうだよ。私とシャルルが昔好きだったのはリンネちゃんのお父さんだよ」
「確かに俺は両親の顔は知らないし、むしろ記憶にない頃に死んだとばかり思っていたんだが」
「私もリンネちゃんのお母さんは知らないよ。お父さんが『こいつを任せた』ってリンネちゃんを置いて、またどこかに行っちゃったし、お母さんの事を聞く事も出来なかったからね」
「色々と衝撃的な事実が多いんだが。それで、俺の親父ってのは、エヴァおばさんとシャルルおばさんを仲裁出来るぐらいだから強かったのか?」
「いや。全然弱かったよ。本当にただの初級魔法師だったからね。リンネちゃんみたいに魔力化け物って訳でもなかったしね。でも、不思議と私もシャルルも惹かれてたんだよね。まあ見た目はリンネちゃんにそっくりだから、実はリンネちゃんに口移しした時はドキドキしてたんだよ」
そう言ったエヴァは大人の魅力全快で、妖艶に微笑んでいた。
ヴァンパイアと言う種族のせいか、エヴァは幼馴染のお母さんと言うだけ歳は離れているのに、見た目は20歳前後にしか見えない若さだ。
そんなエヴァが色っぽく見つめるもんだから、ついつい顔も赤くなってしまう。
「それより、俺の親父の名前はなんなんだ?俺は親父の事を何にも知らないんだよな」
「えっとね、エンマ・アルフィードだよ。エンマは本当に良い男だったよ。でもリンネちゃんも同じぐらい良い男だから、沢山寄ってくる女の子も多そうだし、頑張ってね」
「俺はそんなに良い男か?それに、俺の事を好きになる奴なんているのか?なあリフレにエルシー?」
「いや、まあ私だってだな…ゴニョゴニョ」
「そうですね、私も…ゴニョゴニョ」
「どうしたんだ二人とも?」
「何でもない!」
「何でもありません」
「ホント、なんだって言うんだよ」
「リンネちゃんは随分とニブちんだね。これは苦労するよ、エルシーちゃんにリフレちゃん。それに他にも女の匂いはするし、二人とも頑張るんだよ」
「まったく、三人とも何を言ってるんだ。それより、もっと親父の事を教えてくれないかエヴァおばさん」
「いいよ、私の知ってることなら何でも教えてあげるよ」
こうして、リンネはエヴァから、沢山の親父に関する話を聞かせてもらった。
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