第六十三話 エルシーの覚醒
「お待たせしましたエルシー様。こちらの九名と私を合わせた十名を同時に相手することが出来れば、ホロと同等にやり合う事も可能かと思われます」
「よし、私はいつでも良いから、どこからでもかかってこい!」
エルシーは三種の身体強化系魔法を発動し、全身から力を抜いてリラックスした状態で立っている。
ファウスト達は、そんなエルシーの全方向を囲うように陣取り、一斉にエルシー目掛けて動き出した。
最初にエルシーの元に到達したのはファウストで、その手には血液魔法で作られた刃を持ちエルシーに切りかかっていた。
ファウスト含めエルシーを囲っている全員が特級魔法師で、その全員が宮廷魔法師団の団長クラスだ。
そんなファウストや他の九名の攻撃をエルシーはいともたやすくかわし、かわりに全員の後頭部にデコピンをしながら回っていった。
ファウスト達はそのエルシーの動きを視認することも出来ず、何をされたのかもわかっていない状況だ。
「そこまでだよエルシーちゃん。今のエルシーちゃんを相手にするなら、ファウストクラスを100人以上連れてこないと無理だね」
「これが今の私の力?確かに力は増したと思っていたけど、ここまで強くなってたのか?これならママにも対抗出来るかも!ママ!やっぱり私と手合わせしてくれないか?」
「もちろん良いよ、エルシーちゃん。いつでもかかってきな」
「行くぞママ!」
エルシーは先ほどとは違い、全力での移動をしてエヴァに殴りかかっていた。
しかし、視認出来ない程の速度になったエルシーに対して、エヴァは最小限の動きでかわし、拳を指で受け止めている。
時間にして十秒ほどだったが、その間に数えきれない拳をエヴァに向けたが、一つとしてその拳が届く事は無かった。
「それで終わりかなエルシーちゃん?それならまだまだリンネちゃんにも勝てないーーーぞ!っと」
エヴァがエルシーのデコにデコピンをすると、エルシーは数十メートルと吹っ飛び気絶してしまった。
現時点で世界最強はエヴァで、リンネもエルシーもまだまだその次元には到達することが出来ていないようだ。
そして数十分の時間が経つとエルシーは意識を取り戻し、起き上がってエヴァの方を向いた。
「やっぱりママは異常だ!あんなの絶対勝てる訳が無い!」
「エルシーちゃんも十分強いから自信もって良いよ。ホロの小娘ぐらいなら、今のエルシーちゃんの足元にも及ばないから。それに今のエルシーちゃんなら、パパぐらいなら余裕で勝てるよ」
「そうですね。エルシー様であればホロ如きに遅れを取る事は無いかと思います。念の為にいくつか血液魔法をお教えしますので、その魔法を覚えれば更に各段に力も増しますよ」
「本当か?それじゃあ、今からその血液魔法を私に教えてくれ!」
「ついでに俺にも血液魔法を教えてくれないか?基本になる魔法なら覚える事も出来るだろうからな」
こうして俺とエルシーはファウストの元で血液魔法を学ぶことになった。
血液魔法に関しては、俺もエルシーも割と早く覚える事が出来た。
リンネに関しては初級魔法に限られているので、血液操作を教えてもらっておしまいだ。
血液操作は体内の血液を操作することで、身体能力の強化や身体硬化など汎用性の高い魔法だ。
身体強化と併用することで、今まで以上の力を発揮することが出来た。
エルシーは初級:血液操作と上級:血剣と特級:造血の魔法を覚える事が出来た。
それにより、エルシーは血剣を数百と作り出す事が出来るようになり、さらに血液操作を併用して使う事でその血剣を相手に向け飛ばす事や、同時に数十本を扱う事にも成功した。
今はエルシーの周りに十本の血剣が血液操作によって宙に浮いている状態だ。
その十本の血剣を自在に操る事も出来るので、今まで以上の剣技をすることも可能だ。
「私が教えられる事は全てお教えいたしました。お二方がここまで早く覚えるとは想定外です」
「ありがとうなファウスト!おかげで今までよりさらに強くなれたぞ!」
「あらエルシーちゃん。じゃあもう一回私とやってみる?」
「いや、ママに勝てるイメージがわかない!」
「じゃあ、リンネちゃんはどお?もう一回やってみる?」
「そうだな。正々堂々じゃなくてもいいか?多分正々堂々の一対一じゃ、まだエヴァおばさんには勝てないと思うからな」
「正々堂々じゃないって、どうするつもり?」
「こうするんだよ」
『小型人形1500万×10』
『竜化』
『身体強化』
『血液操作』
リンネは自身を完全なドラゴンへと変化させ、周りには10体の小型ドラゴンを作り出した。
さらに身体強化にも1500万を注ぎ、血液操作で全身の血の巡りを早くしてさらに身体能力を向上させる。
「すごいねリンネちゃん。まさか人間やめてるとは思わなかったよ」
「正々堂々ではなくなったが、エヴァおばさんに対抗するにはこれぐらいやらないと厳しそうだからな」
「何言ってんのさ。その力も全部がリンネちゃんの力なんだよ。これはちゃんと正々堂々とした手合わせだよ。じゃあリンネちゃん、どこからでもかかってきて良いからね」
「ああ、最初から全力で行かせてもらうぞ」
完全なドラゴンでは動きにくかった為、腕と足と翼以外を人間に戻した。
そして動きやすくなると、10体の小型ドラゴンと共にエヴァの元に向かった。
血液操作での身体能力向上もあり、エヴァはリンネの拳を受け止めるが、数回に1回は受け損ねて俺の拳がエヴァに届いている。
更には周辺から10体の小型ドラゴンも同時に攻撃する事で少しづつエヴァの隙も増えてきた。
そして、時間にしては数分しか経っていないが、決着はあっさりと訪れた。
「隙ありだよ、エヴァおばさん」
リンネの放った右ストレートが、エヴァの腹部に突き刺さったのだ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
もし楽しんで頂けたなら幸いです。
ブックマークや評価をしてもらえるとモチベーションがあがりますので、もし良ければおねがいします。
なるべく毎日更新はしていきますので、良ければ今後も読んで頂けると嬉しいです。




