第五十六話 交流戦①
交流戦は大魔法演舞大会のような祭りとは違い、単純に国の魔法師の実力の確認だ。
観客は両国の王族のみと、観客も少ない状態で行われる。
故に司会者や進行役もいない為、自分達で進める事になっている。
ちなみに今回の進行はマルスが進める事になった。
大魔法演舞大会優勝の団で、団長は代表に選ばれている為、副団長のマルスに任されたのだ。
「本日はお忙しい所お集まりいただき、誠にありがとうございます。私の話を聞きたい人などいないかと思いますので、さっそく交流戦の先鋒戦を開始させていただきます。両国先鋒は前へお願いします」
シルビアン王国先鋒:【剛腕】ランス
バーバリアン王国先鋒:【高速の肉塊】クルト
クルトはガチムチの筋肉星人で、見た目からパワーファイターにしか見えない。
ランスも得意とするのは肉弾戦の為、先鋒戦はガチムチファイターの殴り合いになると誰もが予想をしていた。
しかし、クルトはその見た目とは違い、足を生かしたスピードタイプのようだ。
その見た目からは不釣り合いに、筋肉ダルマが高速移動をしている。
しかし、交流戦までの期間でエルシーの練習相手をしていたランスはエルシーのスピードになれていた為、常人からしてみれば捉える事の出来ない速度で移動しているクルトがゆっくり歩いている程度にしか見えなかった。
そして、そのクルトの動きに合わせてランスが拳を繰り出す事で、たったの一撃でクルトを沈めてしまった。
先鋒戦はランスの圧勝で終わったのだ。
「ずいぶんと鈍間な奴だったな。これならレオンの方がマシだったんじゃないか?」
「ずいぶんな言いようっすね、ランスさん。相手のクルトさんのスピードっすけど、普通に私だと捉えきれないっすよ。毎日エルシーさんに付き合わされたランスさんだから鈍間に見えただけっすよ」
「ふむ。確かにエルシーに比べれば鈍間だったのか。なれとは怖いものだな」
「それでは次鋒戦を始めたいと思います。両国次鋒は前へお願いします」
シルビアン王国次鋒:【千の魔幼女】クロエ
バーバリアン王国次鋒:【赤の覇者】クレナイ/竜人赤竜族
「私の相手は竜人っすか」
「運が悪いお嬢ちゃんね。私は赤竜族が長、クレナイよ。子供はさっさと布団に入って寝てなさい」
「誰が子供っすか!?私はれっきとした大人のレディーっす!って言うか、私の相手が竜人って、かなり残念っすよ」
「そうね、私が相手じゃお嬢ちゃんに勝ち目なんてないものね。残念にもなるわよね」
「いやいや違うっすよ。竜人って竜化しか出来ないじゃないっすか。どうせならもっと色々な魔法が見たかったっすよ。バーバリアン王国なら私の知らない魔法もあると思ったのに、よりによって竜人が相手とか、やる気無くすっすよ」
「ずいぶんとふざけたお嬢ちゃんね。良いわ一瞬で再起不能にしてあげるわ」
「もお良いっすよ。マルス君、合図するっす」
「了解しました団長。それでは次鋒戦、開始!」
「竜化」
クレナイは腕・胴体・足をドラゴン化させ、さらに尻尾まで生やしていた。
「これが私の全力よ。お嬢ちゃんには何が出来るって言うのかな?」
「やっぱりただの竜化っすか。他に期待も出来ないのでちゃちゃっと終わらせるっすよ」
「真竜化」
クロエはクレナイ同様に腕・胴体・足をドラゴン化させ、クロエは尻尾は生やしてはいないが全身から光り輝くオーラを放っていた。
竜化と真竜化では、大人と赤ん坊以上の差があり、クレナイはクロエの真竜化を見ると
「ななななななっ、何で人間が竜化…いあ、真竜化を使え………」
クレナイは目の前のあり得ない状況に、また自身よりも圧倒的なドラゴンのオーラを全身に浴びると、それだけで意識を失ってしまい口からは泡を吹いてしまった。
「…………私の勝ちで良いっすよね?」
「はい、勝者シルビアン王国クロエ」
こうして、一切の戦闘をすることも無く、あっさりと次鋒戦の決着がついたのだ。
「お疲れ団長」
「何にもして無いっすよリンネ君。変身して解除しただけっす」
「それにしても、団長の相手が竜人だとはな。あれならシャロンの方が強かったんじゃないか?」
「シャロンさんと比べるのは失礼っすよ。シャロンさんの方が数百倍強いっす」
「それでは中堅戦を始めたいと思います。両国中堅は前へお願いします」
シルビアン王国中堅:【剣姫】エルシー
バーバリアン王国中堅:【神速拳聖】カムイ
エルシーの相手は神速の拳を繰り出す武道家だ。
カムイの繰り出す拳は誰一人として捉える事が出来ず、気づけばすでにその一撃を貰い意識を手放してしまう。
「カムイ君、君が負けたらその時点で私たちバーバリアン王国の敗退が決まるのよ。そんな小娘さっさと倒しちゃいなさいよ」
「わかってますよシオン様。私の拳は誰にも止められないので、一瞬で終わらせますよ」
「なんだ、お前は武道家なのか?私のママも武道家だったから、私も武道は少し教えてもらった事があるぞ。ママの動きが理解出来なくて、ほとんど再現出来ないがな」
「ほお、お前も武道の心得があるだと?しかし少しやった程度で私の拳を止められるなどと思わない事だな」
「そうか。中堅戦で残念だったが、相手が武道家なのは楽しみだ!私も今回は素手でやるからな!」
「調子にノった小娘だな。その自信、一瞬で砕かせてもらうぞ」
「それでは両名準備は良いですね?中堅戦開始!」
カムイは一切の躊躇も無く、全速の拳をエルシーの顔めがけて放った。
しかしその拳はエルシーの顔に届く事なく、紙一重でかわしていた。
「ほお、まぐれとは言え、よく私の初手を躱せたものだ。しかしまぐれは続かない物だぞ」
そう言って一瞬にして数十の拳をエルシーめがけて放つが、その全てを紙一重で全てかわした。
その一瞬の時間でカムイは、目の前のエルシーがまぐれで避けている訳では無いと判断し、一旦距離を取って構えなおした。
「すでに身体強化でも使っていたのか。まあ、それなりには速く動けるようだな。少し見くびっていたぞ」
「私はまだ、魔法なんて何も使ってないぞ?その程度のパンチ、ママに比べれば遅すぎて止まって見えるぞ」
「強がりを言いおって。よい、これで終わりにしてやる」
「闘神、加速、雷速」
「これでお前には何もさせずに終わらせてやるかな」
「なんだ、強化系魔法もそれだけしか使えないのか?」
「まだ言うか小娘が!お前に何が出来ると言うんだ!」
「韋駄天、戦姫、加速、雷速、炎進力」
「さてと、まだやるか?」
カムイは目を見開き、エルシーの纏うオーラに圧倒され腰を抜かしてしまう。
次の瞬間にはエルシーがカムイの横に座り込みながらカムイの肩を叩き
「なあ、それでどうするんだ?」
エルシー動きが全く視認出来ず、気付いた時にはすでに真横にいたエルシーに戦慄を覚え、カムイはその光速の身体能力で目にも止まらない速度で土下座をし
「まいりました!私の負けです!」
こうして、エルシーはカムイの攻撃を避けるだけで終わってしまい、不完全燃焼とでの勝利となった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
もし楽しんで頂けたなら幸いです。
ブックマークや評価をしてもらえるとモチベーションがあがりますので、もし良ければおねがいします。
なるべく毎日更新はしていきますので、良ければ今後も読んで頂けると嬉しいです。




