第五十五話 天槍と竜槍
時は流れ、バーバリアン王国との交流戦まであと数日になった頃。
「っっしゃーーーっす!光の魔力付与値が10000になったっすよ!!」
そう言った次の瞬間には、二つの光属性魔法がクロエの頭の中に浮かんだ。
『天槍』『竜槍』
「うおっす、マジで頭に浮かんだっすよ!って、ずいぶんと物騒な魔法っすね」
「おお、団長もついに10000の化け物か。で、どんな魔法なんだ?」
「1000万の人外に言われたくないっす。一つは天槍っす。天から神速の槍が雨の様に降り注ぐっす。で、もう一つが竜槍っす。雷の槍で相手に刺さると盛大に破裂するらしいっす」
「それって、相手を100%殺すんじゃないか?」
「まあ、そうなるっすね。なので普段は使えないっすね。でも天槍は魔物の殲滅には便利っすね」
「羨ましいぜ団長。私なんてまだ6000までしか上がらなかったぞ」
「全属性6000って、少し前のジーナを上回ってるじゃないか。それに、新しく覚えた韋駄天だったか?あれのおかげでジーナと同等の速度まで出せるようになったんだろ?」
「確かにジーナさんには追いついたが、それでも一度も勝てなかったんだよ。結局リンネにも勝てなくて交流戦は中堅とか悔しいじゃないか」
交流戦は一般的な団体戦で、勝利数の多い国の勝ちとなる。
現在の戦力状況の確認の意味合いもあり、大将がその国のトップであること以外は、基本的に実力順で組まれることになる。
シルビアン王国のオーダーは以下の通りだ。
大将:ジーナ・エルメール
副将:リンネ・アルフィード
中堅:エルシー・スカーレット
次鋒:クロエ・フォン・サーベント
先鋒:ランス・フォン・グリネード
交流戦までにジーナ以外の四人で総当たり戦を行い、その結果でオーダーは決まった。
ちなみにリンネは三勝、エルシーは二勝一敗、クロエは一勝二敗、ランスは三敗だ。
昨年の交流戦の副将はランスで、今回はそのランスが先鋒だ。
過去十年、ジーナは無敗らしいが国としては全敗らしい。
なので、今回こそはと交流戦に意気込んでいる。
交流戦のルールとしては相手を死なせない事、それ一つ。
それ以外は何でもありの魔法バトルだ。
そして数日が経ち、バーバリアン王国の王国魔法師団の代表メンバーが到達した。
「久しぶりねジーナ」
「基本的には一年に一回しか会わないからね。久しぶりシオン」
ジーナに挨拶をしているのはバーバリアン王国魔法師帝だ。
「今回も国としてはうちが勝たせてもらうわよ」
「ふふん。今回のシルビアン王国は一味違うよ。なんて言ってもランス君が先鋒になるぐらいレベルが上がってるからね」
「まあ、まだランス君が代表なの?うちのレオン君は今年は代表に選ばれないぐらいのレベルなのに。これは今年もうちの勝ちの様ね」
レオンは昨年のバーバリアン王国副将で、ランスに敗退した奴らしい。
しかし、その昨年の副将が今回は代表にも選ばれていないらしく、バーバリアン王国にしてもレベルは上がっているようだ。
「レオン君なんて、去年ランス君に手も足も出なかったよね。そんな子に毛が生えた程度の子が出ても、今年のシルビアン王国には勝てないんだからね」
ただの挨拶のハズだが、両国の魔法師帝が今にもバトりそうな雰囲気でにらみ合い牽制し合っていると
「ジーナさん、交流戦は明日っすよ。そんなにいがみ合って疲れないっすか?」
「シオンが先に突っかかってきたんだよ。シオンが悪いんだよ」
「まあまあ。バーバリアン王国魔法師帝シオンさん。ジーナ魔法師帝がご迷惑おかけしたっす。長旅も疲れたと思うので、宿を用意してあるので休んでほしいっす」
クロエはそう言うと、バーバリアン王国王国魔法師団のメンバーを宿へと案内していった。
その間もジーナは舌を出し「べー」と子供の様に威嚇していた。
この人は本当にクロエの幼馴染、イミルの母親何だろうか?
エルシーに近い子供っぽさを感じるのだが。
宿へはクロエが一人で案内し、案内が終わると俺たちの所へと戻って来た。
「ジーナさん、あなたはこのシルビアン王国の魔法師帝っす。この国の顔っす。しっかりしてくださいっす」
「でもねクロエちゃん。あれはシオンが悪い。シオンが余計な事を言わなければあんなことにはならなかったんだよ」
「それでもジーナさんは我慢をするっす。迎える側の魔法師帝なら、もっと落ちつくっす」
「うう、ごめんねクロエちゃん」
どっちが大人なのかわからないが、見た目幼女のクロエに、見た目は大人の女性のジーナが説教されてる光景ははたから見れば普通じゃない。
「それで、明日はとうとう交流戦っす。オーダーは決まってるので、後は明日全力を尽くすっすよ」
「そうだよ、明日は絶対に勝って、あのシオンにぎゃふんと言わせるよ。クロエちゃんもランス君もリンネ君もエルシーちゃんも絶対に勝ってね」
「俺が先鋒相手に負ける訳が無い」
「ランスさんはそんな事言って、私たちに全敗じゃないっすか。でも私も負けないっすよ」
「本当は相手の魔法師帝とやりたかったけど、私は私の相手をねじ伏せるさ」
「まあ、負けない様に頑張るよ」
「ちょっとリンネ君のやる気は見えないけど、明日は頑張ろうね」
こうして、シルビアン王国VSバーバリアン王国の交流戦が幕を開けるのだった。
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