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もうひとつの個性世界  作者: 氷花
第1章 最終決戦
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第56話

遅くなりました

「そういえば【心技システム】ってどういう風に使うんだっけ・・・」

そのことをすっかり忘れていた俺だったが、

「あなたの思うように【想像】すればいいんじゃない?」

という返事をもらい、俺は今必要なものを【想像】し始めた。


(今俺に必要なのは・・・。銃弾?いや普通の銃弾じゃ意味が無い。自動追跡弾?いや、まず敵が見えなければ意味が無い。どうすればいい・・・?)


(あなたは本当に馬鹿ね。あなたが今したいことは何?)


どうやら桜姫を同調しているようで、思考回路の中までつながっているようだ。おかげで考えごとがまる聞こえだ・・・。


(俺がしたいことは、皆に俺が本物だって証明したい。ただそれだけだ)


(そう。ならやれることはひとつじゃない?)


(ひとつ?)


その言葉の意味がわからない。


(よく考えなさい。別に誰も敵を倒せ。何て言ってないでしょ?)


(倒せ・・・?戦い方を・・・?いや・・・でも・・・)


言われればそうだが、実際にどうすればいいのかはわからない。


(本当にダメな人ね・・・面倒だから言ってしまうけど、別にステルスバードを倒す必要なんてないのよ。説明をよく思い出して)


(たしか、証明中に攻撃は不可。それは関係の無いものたちでも適応される。

ただし、倒すための動きを見て判断する場合のみモンスターの召喚が認められ、それに対しては攻撃を許可する。ただし召喚モンスターとの戦闘は、一人1回までとする

証明において、公平に行うため、投票する場合、審査員には目隠しをしてもらい、投票をする。ただし、生きている人のみ権利をもつ。

投票は全部で2回行われる。2回目が証明の結果となる。審査員とは、その場にいる夜を除く人たちを指す。

投票され、票数の多いほうが本物と思われるほうとする。だったか?)


(ならもう分かるわよね?)


説明の意味をよく考えながら思い返す。


(・・・あっ!)


(やっとわかったの?)


(ああ。つまり、ーーーーーーーーーすればいいんだろ?)


(そう。だから少し前にいったことと矛盾しちゃうのだけれども、別に銃じゃなくてもいいのよ。ただーーーーーできるのならば)


(でもそれならなおさら銃のほうがいいな)


(そう?まぁあなたの判断に任せるわ。だって私の本来の姿は決まった姿を持たない人型キャラクターなのだから)


なぜかテンションが上がっているような気がする。


(やっぱり桜姫のスペックは異常だよな)


(それには何もいえないわ。だって後付のプログラムですもの♪)


なんて無茶苦茶な設定だよ・・・。


(じゃ、行くか)


俺は今必要なものを想像する。今の俺に必要なのは、確実に当てるための技量、最低でも意識を断ち切れるような銃弾の二つ。

(ずいぶんと不可能な【想像】をするわね・・・)

(でも想像なんて人の自由さ。それが可能でも不可能でも想像(妄想)は自由さ。物事を深く考えることが可能なのが人なのだから)

(ふふっ。語るのはいいけれど、内容が薄いわよ)

見えなくても桜姫は楽しげな様子なのだろう。それは単なる勝手な【想像】なのだけれども。

(じゃ、そろそろ始めるか)

(私はあなたのもの。あなたの思うがままに)


「【心技システム】起動」

しばらくの間使わなかった(使えなかった)ため、使い方もすっかり忘れていたため、とりあえず起動コマンド的なものを言ってみただけである。

しかし、それはうまく言ったようで、


≪心技システム起動。認証開始。システムコード88899999。長時間ノ無使用ニヨリ使用コマンドガ解除サレマシタ。新シイデータ作成中/・/・/・

システム上限ニヨリ新シイデータノ保存量ハヒトツ。設定ト共ニ認証終了。心技システムノストッパー解除≫


どうやら長期間無使用により、前に使っていた心技システムの内容。つまり能力は使えなくなったということだろう。

その代わりに新しくテータを構築し、新しい【想像】を1つ更新できるようになったわけか・・・。


(ねぇ夜?どうせならいっそ、この世界自体を【想像】してみるのはどう?)

(世界自体を想像?そんなこと可能なのか?)


普通に考えれば不可能な話だろう。

なぜらな、このゲーム自体は所詮はゲームであり、まったく別のものである。世界自体を想像。もとい創造するなどまず不可能だ。


(それはわからないけど、私らの異常な力を使えばそれも可能ではないかしら?)

(私ら?)

すると桜姫は同じ魔剣と呼ばれる者たちのほうを見た(ように感じた)。

(彼らは最初から気づいているわ。あなたが本物で、向こうが偽物ということを)

(何でそんなことが分かるんだ?)


それがわかっているならば、力づくで勝敗をつけることもできたであろう。


(それは秘密。で、やるのやらないの?)

(でも桜姫。急にそんなことを言うなんて珍しいんじゃないか?)

今まで冷静な桜姫がこのように突発的なことを言うのは珍しい。というか、今までは無かった。

(そんなの簡単ことよ。だって私たちはこの世界の一部を担っていたのよ?それくらい考えていてもおかしくは無いでしょ?)


そういえばそうだった気がする。

だが、話が急に変わりすぎているようにも感じる。

今まで何も干渉してこなかった世界そのものを作り変えてしまうなんてことは考え無かった。

桜姫はいつもと様子が違うようにも感じた。


(何無駄なこと考えているの?私のことなんて分かるわけがないじゃない。ほら、早くやるわよ)


そういえば思考回路がつながってるんだった・・・。

しかも都合がいいことに疎通は一方通行ですか・・・。

ここはしょうがなく、黙って桜姫に従うことにした。


(でも、どうやって伝えるんだ?)

(そんなの私たち4人はいわば4つで1つ。四位一体見たいなものなのよ。だから会話もできるわ)


なんだその便利な能力。いくら後付けだからってチート能力だろ・・・。


(じゃあ、頼んでみてくれ)

(もう頼み終わってるわ)

(・・・はやっ!)

(もちろん二つ返事だったわよ)

(実際どうやって世界なんて想像するんだ?想像はあくまで想像。つまり想像がつかなければ想像できないんだが・・・)

(そんなの簡単よ。よく小説でもあるでしょ?【世界創造ワールドクリエイト】ってやつよ)

確かにそんな感じの力が存在した小説を読んだ気がする・・・。

(でも、確かああいう小説って異世界転生とかのあとから目覚める能力じゃなかったか?)

(だから私たち4人が必要なのよ。分かる?この意味。いえ、わからないでしょうね。聞いた私が情けないわ・・・)


なぜかすごく残念な表情をしている。盛大なため息までついていらっしゃる・・・。

きっとこの結果を招いたのは俺の理解力の無さなんだろうな・・・。でも、さすがに傷ついた。


(つまり、“後付け”というのが共通点といいたいのか?)

すると、驚いた様子で俺のほうを見る。いつの間にか武器の状態から人型に戻っていた。


ちなみに今は戦闘が始まっていて、きっと上空にステルスバードが飛びまわっているだろう。

先ほどまでは、俺が無言で立っている様子を他の人たちは見ていただろう。(一部を除く)


(一人で理解できたのね?よかった・・・)

今度は本気で安心した表情。

(さすがに傷ついたぜ・・・)

(ならやるわよ。もう既に彼らは準備が終わっていつでも対応できるようになっているわ)

全スルーですかっ!


彼ら。つまり、薔薇、日向、紅葉は今まで立っていた場所に座り込み、あぐらをかき、目を瞑っている。俗に言う瞑想の姿勢である。

(このあとの段取りは簡単よ。まず私が集中に入る。次に私の合図があったらあなたは私に触れながら【心技システム】を起動、展開、記録の3つを行うだけよ)

(ちょ、ちょっと待て!起動、展開、記録ってどうやるんだ!?)

唐突に言われたのもあり、まだ状況に対応できていない。

(そんなの勘よ。それとも主人公補正とやらに期待してみる(笑)?)

勘とか主人公補正って・・・。

(とにかく!もうやるしかないのよ!)

そういって再び銃に戻るのかと思ったら、銃ではなく人の姿のままで他3人と同じように瞑想に入る。

その様子を残ったルナ、ライト、蒼焔、妙乱が見ている。


そして、瞑想を始めた4人の足元に魔方陣のようなものが現れる。

薔薇の下には赤色シャムの魔方陣

日向の下には青色アクアマリンの魔方陣

紅葉の下には黄色シリトンの魔方陣

桜姫の下には桜色パパラチアの魔方陣


それらがそれぞれ膨大な気となってそれへと伸びていく。4色の柱は天を貫き、辺りを照らす。

やがてそれぞれの色の気が螺旋状を描き、お互いの色を残しながら混ざり合っていき、一本の柱が天を貫いて伸びていく。


(今よ)

いよいよ合図がきた。


俺は桜姫の肩に触れて言う。

「【心技システム】≪第零式≫~世界創造ワールドクリエイト~」

とりあえず言われたとおりのようなことをやってみる。

名前はなんとなく思いついたものだ。


すると天へと伸びていた気の柱は形を変えていく。

柱は徐々に高さを変え、低くなっていくが、その分横へと範囲を伸ばしていく。

そして伸びていた一本の柱は徐々に形を変えていき、一つの球体になる。

球体は真ん中に大きな球体があり、その周りを公転するようにもとの4色の小さな球体が回っている。いわば天体の天球のようだ。

その球体はやがて俺の体とぶつかり、吸収されていく。


実に不思議な感覚だ。自分の体に異物が入ってきたような感覚ではなく、暖かく優しい気持ちになれる。

とても気分がいい。心が浄化されていくような感覚にもなる。それが器に入ったようにどこかに収まっていく。


心技システム認証完了。≪第零式≫登録完了シマシタ。タダシ容量越え(オーバーイメージ)ノタメ使用回数ヲ制限シマス。


その台詞があたりに聞こえた所で4人の気は消えていった。


「成功ね」

「ええ」

「はい」

「ですね」

と4人はいつもは見せない疲労を顔に表している。

「ありがとう。私はこれからが本番だから」

桜姫は3人に笑顔でそう告げる。

薔薇、日向、紅葉は一度顔を見合わせながら、同時に笑みを浮かべ

「「「どういたしまして」」」

声を合わせ、そして微笑む。

そして、3人は姿勢を崩し、その場に倒れていった。

「本当に・・・ありがとう」

桜姫はそれを覚悟していたかのように感謝の気持ちを述べ、倒れて武器の姿へと戻った3人を胸に抱きよせる。


「彼らは・・・どうなったんだ?」

「自分たちの生気を放出したから、回復するために眠っているという感じよ」

しかし、その表情から察するに、それは嘘だ。

その悲しみにあふれた目。小刻みに震える唇を俺は見た。

ただ眠っているだけならばこのような表情はしないだろう。つまりもっと深刻なことだろう。

だから、俺の予想では、彼らは力を失ったのだろう。言い方が悪ければ、死だろう。たぶん気と呼ばれるものは言い換えれば“生命力”なのだろう。

それを体外に放出し、俺の中に取り込んだ。そうなれば自分の生命力を他人へと渡したことになる。


桜姫はゆっくりと3人を地面へと下ろし、

「少しの間だけ・・・向こうを見ていてくれないかしら・・・?」

その声には羞恥も含まれていたのだろう。だから俺は黙って体の向きを逆にする。


その様子を見ていた他の人たちは状況がまだ読み込めていないように顔をポカンとさせている。


数十秒の沈黙のあと、桜姫は立ち上がり、「もう大丈夫」という。

その言葉を合図に俺は桜姫の方を向く。


桜姫の顔にもう涙は無く、覚悟を決めた表情をしていた。


「桜姫、その腕の紋章は?」

「ちょっとした約束よ」

彼女の右腕には先ほどまで無かった刺青のようなものがあった。

右腕全体に線が延びていて、模様というよりは三本の線が腕の周りを回っているような感じ。

螺旋状というべきか。線の色は赤青黄色。つまりあの三人の色。約束の内容はわからないが、三人の意思を引き継いだということだろう。


「さぁ、ここまでだいぶ時間がかかってしまったわ。早く終わらせましょう。(もう時間も少ないみたい・・・)」

「・・・?--ああ、そうだな」

最後のほうの言葉は聞き取ることができなかった。


桜姫は人の姿から再び武器へと変わる。


かと、思ったが、その姿は人のままだった。


「どういうことだ?」

てっきり武器になるのかと思ったので、驚いた。

「今の私はどうやら人型の武器みたいなもののようね。三人の力でまた私の能力が変化したということだと思うわ。だからこういうこともできるみたい」

桜姫は左腕を前へ向け、右から左へと空を薙いだ。

すると、突如その軌道に細剣が現れた。


「これは日向の武器。名は青剣ブルールーク-日向-」


続いて右上から袈裟斬のような軌道を描くように空を薙ぐ。

今度は大斧が現れる。


「これは薔薇の武器。名は赤斧レッドポーン-薔薇-


さらには腕を縦に振り下ろす。

今度は槍が現れる。


「これは紅葉の武器。名は黄槍イエローナイト-紅葉-


合計3つの武器が現れた。

「さて、ここからが本番よ。気を引き締めないとね」

桜姫は今まで見せたことの無い表情で言う。それは何かを気にするようにあせっているような表情であった。

何に対してだかはわからないが、明らかな動揺が表情にあふれている。


「なあ桜「さあ、行くわよ」・・・姫」

ついには俺の話しさえ聞いてくれないようだった。


合成ユニオン】展開。

「古に封印されし魔剣。知性者は世に名を残し歴史を刻む。名は【日向】。 強者は世に平穏を齎し国を営む。名は【薔薇】。

奇術は常に影を好み世に均衡を齎す闇を生む。名は【紅葉】。全能は都合の因果。空を濁し、地を蝕み、光を喰らい、影を乱す。名は【桜姫】 」


よく意味のわからない単語を並べ、何かを唱えている桜姫を俺は隣で眺めていた。


周囲にある武器たちがそれぞれの色を放ち始める。


一度、ことばが途切れ、これで終わりか?と思い、話しかけようとした瞬間、第2章とも呼べそうなことばが始まった。


「夢から醒める時、再び現実へと戻る。長く眠り続けた代償は今ここで晴らされる。時は止まらず進み続け、記録を上書きしていく。

昨日を消し、今日を書き、明日に備える。その速度は決して均衡は無く動き続ける。コード-DEAD END-発動」


今まで機械のようにただ長たらしい文字を読んでいた状態は終わり、桜姫の体から光がこぼれ始めた。


なんとなくで推測すると、今までの長文はよくある魔法の詠唱ではなく、何かの別の意味があるはずだ。

なぜなら詞の一つ一つが別のものを指し示しているようだからだ。

魔法の詠唱ならば、基本的にその元となるものについてのみについて言葉を綴るはずだからだ。

ただ、そのことを聞いても答えてくれるはずも無いので、心の中にしまっておくとしよう。


「桜姫?」


呼びかけても返事は無い。あの長文のあとから、体の向きも変えることもなく俺と逆方向を向いてる。


「ねえ夜?」


少し時間がたった後、急に桜姫から声をかけられたので、少々驚いた。

そして、先ほどまでの沈黙が桜姫の声によって消滅した。


「っ・・・」


桜姫と目が合った瞬間、俺は無意識に視線をそらしてしまった。

それは、【恐怖】であった。

先ほどとそもそもの存在が異なっているようにも感じた。

目からは光が消え、とにかく恐ろしかった。


桜姫は変わってしまった。それも劇的に、唐突に。


何故そのように変わってしまったのか理解できない。

何故そのような目をするのか理解できない。

何故そのような態度を取るのか理解できない。

何故急に無茶なことをやりだしたのか理解できない。

何故俺はこんな所にいるのか理解できない。

何故夜という存在が二人いるのか理解できない。

何故ここまで行われてきたことに何も言わないのか理解できない。

何故。何故だ。理解できない。理解できない。理解できない。


俺の思考は一気に真っ暗の世界へと突き落とされたような感覚に陥った。

これは前に感じたことがある気もする。

いつだったか・・・。


・・・


・・・そうか。魔春と戦ったとき・・・か。


何故だか意識が遠のいてゆく。とても眠い。とにかく寝てしまいたい。


そして俺はその場に崩れ落ちた。


その様子を見た桜姫は俺の横に座りこう告げた。

「あなたはこれからもとの世界へと戻るわ」



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