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92話
男は石畳の上を歩いていた。
コツ……コツ……
広場は広い。
中央の剣の束が遠くに見える。
何十本も突き刺さっている。
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男は少し立ち止まる。
その時。
「止まったね」
声がした。
男は振り向く。
女が立っていた。
男
「広いから」
女は少し笑う。
「迷った?」
男
「少し」
女は中央の剣を見る。
「目印あるのに」
男
「確かに」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
女は石畳を軽く踏む。
コツ。
音が広場に響く。
女
「いい音」
男
「静かだからな」
女
「静かすぎる」
男
「そうかも」
少し沈黙。
風が吹く。
女は空を見る。
雲がゆっくり流れている。
女
「空は普通」
男
「普通だな」
その瞬間。
女が消えた。
男は中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




