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89話
男は広場に立っていた。
中央の剣。
何十本も石畳に突き刺さっている。
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男は手に小さな機械を持っていた。
スマートフォン。
画面を見る。
「……圏外」
指で画面を触る。
何も変わらない。
男は少し歩く。
コツ……コツ……
剣の近くまで行く。
刃を見る。
夕日が反射している。
男は小さく笑う。
「ほんとだった」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
男は空を見る。
雲がゆっくり流れている。
それからもう一度スマートフォンを見る。
「……ここでも」
男は少しだけ頷く。
その瞬間。
男の姿が消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




