88/100
88話
男は石畳の上に座っていた。
中央の剣から少し離れた場所。
足を伸ばしている。
風が吹く。
遠くで鎖が鳴る。
カチャ……
男は空を見ていた。
雲がゆっくり流れている。
その時。
「休憩?」
声がした。
男は顔を向ける。
女が立っていた。
男
「そんな感じ」
女は少し近づく。
それから男の隣に座る。
石畳の上。
女
「硬い」
男
「石だからな」
女は少し笑う。
風が吹く。
中央の鎖が揺れる。
カチャ……
女は剣を見る。
「遠くからでも見える」
男
「目印みたいだ」
女
「確かに」
少し沈黙。
女が空を見る。
「雲、ゆっくり」
男
「ここだと」
男
「時間もゆっくりな気がする」
女は少し頷く。
「わかる」
風が吹く。
草が揺れる。
女が立ち上がる。
男
「もう行く?」
女
「うん」
その瞬間。
女が消えた。
男は空を見る。
雲が流れている。
それから立ち上がる。
中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




