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86話
女は石畳の上をゆっくり歩いていた。
コツ……コツ……
中央の剣の束が見える。
何十本も突き刺さっている。
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
女は少し立ち止まる。
その時。
「歩くと響くね」
声がした。
女は振り向く。
男が立っていた。
女
「広いから」
男は石畳を軽く踏む。
コツ。
男
「確かに」
女は中央の剣を見る。
「近くで見ると」
女
「ちょっと怖い」
男
「多いから?」
女
「うん」
男は少し笑う。
「それはある」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
男は広場を見回す。
「でも」
女
「うん」
男
「走れそう」
女は少し笑う。
「走る?」
男
「やめとく」
女
「私も」
少し沈黙。
風が吹く。
女は空を見る。
雲がゆっくり流れている。
女
「空は普通」
男
「普通だな」
その瞬間。
男が消えた。
女は中央の剣を見る。
夕日が刃に反射する。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
女の姿も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




