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84話
男は石畳の上を歩いていた。
コツ……コツ……
中央の剣の束が見える。
何十本もの剣。
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男は少し立ち止まる。
その時。
「歩いてばっかりだね」
声がした。
男は振り向く。
女が立っていた。
男
「広いからな」
女は石畳を軽く踏む。
コツ。
女
「確かに」
男
「走れそうだ」
女は少し笑う。
「走る?」
男
「やめとく」
女
「私も」
風が吹く。
中央の鎖が揺れる。
カチャ……
女は剣を見る。
「近くで見ると怖い」
男
「なんで」
女
「多すぎる」
男は少し笑う。
「それはある」
少し沈黙。
女は空を見る。
「空は普通」
男
「普通だな」
女
「だから余計変」
男は少し頷く。
風が吹く。
草が揺れる。
その瞬間。
女が消えた。
男は剣を見る。
夕日が刃に反射する。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




