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83話
男は中央の剣を見ていた。
何十本も刺さった剣。
鎖でまとめられている。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男は少し目を細める。
「……」
その時。
「やっぱりある」
声がした。
男は振り向く。
女が立っていた。
男
「知ってるのか」
女は中央の剣を見る。
「直接じゃない」
男
「じゃあ」
女は少し笑う。
「母」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
男
「来たことあるのか」
女
「昔」
男
「ここに?」
女は頷く。
「変な場所だったって」
男は少し笑う。
「それは合ってる」
女は剣を見る。
「剣がいっぱいあったって」
男
「それも合ってる」
女は少し考える。
それから言う。
「あと」
男
「うん」
女
「人に会ったって」
男
「ここで?」
女
「うん」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
女は空を見る。
雲が流れている。
女
「でも」
男
「うん」
女
「誰も名前を覚えてないって」
男は少し黙る。
風が吹く。
その瞬間。
女が消えた。
男は中央の剣を見る。
少し空を見る。
そして
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




