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臨界(仮)  作者: vastum


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83/100

83話

男は中央の剣を見ていた。


何十本も刺さった剣。


鎖でまとめられている。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男は少し目を細める。


「……」


その時。


「やっぱりある」


声がした。


男は振り向く。


女が立っていた。


「知ってるのか」


女は中央の剣を見る。


「直接じゃない」


「じゃあ」


女は少し笑う。


「母」


風が吹く。


鎖が揺れる。


カチャ……


「来たことあるのか」


「昔」


「ここに?」


女は頷く。


「変な場所だったって」


男は少し笑う。


「それは合ってる」


女は剣を見る。


「剣がいっぱいあったって」


「それも合ってる」


女は少し考える。


それから言う。


「あと」


「うん」


「人に会ったって」


「ここで?」


「うん」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


女は空を見る。


雲が流れている。


「でも」


「うん」


「誰も名前を覚えてないって」


男は少し黙る。


風が吹く。


その瞬間。


女が消えた。


男は中央の剣を見る。


少し空を見る。


そして


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


風だけが吹いていた。

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