78/100
78話
男は中央の剣の前に立っていた。
何十本もの剣。
石畳に突き刺さっている。
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男は刃を見ている。
夕日が反射していた。
その時。
「光ってるね」
声がした。
男は振り向く。
女が立っていた。
女
「鏡みたい」
男
「確かに」
女は剣の刃を見る。
自分の顔が少し映っている。
女
「歪んでる」
男
「刃だからな」
女は少し笑う。
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
女は広場を見回す。
「広い」
男
「走れそうだな」
女
「走る?」
男
「やめとく」
女は少し笑う。
「私も」
少し沈黙。
風が吹く。
女が言う。
「ヒロ」
男
「ん?」
女
「ここ、来たことある?」
男は少し驚く。
「……ない」
女は少し首をかしげる。
「そう」
男
「なんで俺の名前」
女は少し考える。
それから笑う。
「今、思いついた」
男は少し笑う。
「適当だな」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
その瞬間。
女が消えた。
ヒロは剣を見る。
夕日が刃に映る。
空を見る。
そして
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




