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72話
少年は広場を走っていた。
石畳の上を。
タッ、タッ、タッ。
中央の剣をぐるりと回る。
何十本もの剣。
鎖でまとめられている。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
少年は止まる。
息を整える。
「広いな」
その時。
「走ると危ないよ」
声がした。
少年は振り向く。
男が立っていた。
少年
「危ない?」
男
「転ぶかも」
少年は足元を見る。
石畳。
「確かに」
男は剣を見る。
「でも」
男
「ここなら走りたくなる」
少年は少し笑う。
「さっき走った」
男
「見てた」
少年
「速かった?」
男
「まあまあ」
少年はもう一度走ろうとする。
男
「また?」
少年
「うん」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
少年はまた走る。
中央をぐるっと一周。
タッ、タッ、タッ。
男はそれを見ている。
少年は止まる。
息を整える。
「静かだね」
男
「うん」
少年
「走ってる音だけ」
男
「そうだな」
少し沈黙。
風が吹く。
少年が空を見る。
雲が流れている。
少年
「いい空」
男
「いい空」
その瞬間。
少年が消えた。
男は中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




