70/100
70話
女は剣の前に立っていた。
中央の剣の束。
何十本も石畳に刺さっている。
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
女は一本の刃を見ている。
夕日が映っていた。
その時、声がした。
「触った?」
女は振り向く。
男が立っていた。
女
「まだ」
男
「冷たいよ」
女は柄に手を伸ばす。
触れる。
「……ほんとだ」
男は少し笑う。
「言っただろ」
女は手を離す。
女
「抜ける?」
男
「試した」
女
「抜けた?」
男
「全然」
女は少し笑う。
「やっぱり」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
女は剣を見る。
「これ」
女
「全部同じ人のかな」
男は少し考える。
「違う気がする」
女
「なんで?」
男
「重さが違いそう」
女は少し笑う。
「持ったの?」
男
「持てない」
二人は少し笑う。
風が吹く。
夕日が低くなる。
少し沈黙。
女が言う。
「私ね」
男
「うん」
女
「こういう場所好き」
男は少し頷く。
「わかる」
その瞬間。
女が消えた。
男は剣を見る。
夕日が刃に映る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




