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臨界(仮)  作者: vastum


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63/67

63話

男は地面を見ていた。


石畳。


割れ目。


小さな砂。


指でそれを触る。


風が吹く。


中央では鎖が揺れる。


カチャ……


男は顔を上げる。


剣の束。


何十本も刺さっている。


その時、声がした。


「石、好きなの?」


男は振り向く。


女が立っていた。


「好きってほどじゃない」


女は笑う。


「でも触ってた」


「なんとなく」


女は少し近づく。


中央の剣を見る。


「多いね」


「多い」


少し沈黙。


女は空を見る。


「いい天気」


男も空を見る。


雲が流れている。


女は言う。


「先に言っとくね」


「何を」


「名前」


女は少し笑う。


「私はミサキ」


男は少し驚く。


「……急だな」


ミサキ

「聞くでしょ普通」


男は少し考える。


「まあ」


ミサキ

「あなたは?」


男は少し間を置く。


剣を見る。


風が吹く。


カチャ……


「シュン」


ミサキは少し頷く。


「よろしく」


シュンは少し笑う。


「ここで?」


ミサキ

「ここで」


二人は少し笑う。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


その瞬間。


ミサキが消えた。


シュンは少し空を見る。


「……早いな」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


風だけが吹いていた。


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