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63話
男は地面を見ていた。
石畳。
割れ目。
小さな砂。
指でそれを触る。
風が吹く。
中央では鎖が揺れる。
カチャ……
男は顔を上げる。
剣の束。
何十本も刺さっている。
その時、声がした。
「石、好きなの?」
男は振り向く。
女が立っていた。
男
「好きってほどじゃない」
女は笑う。
「でも触ってた」
男
「なんとなく」
女は少し近づく。
中央の剣を見る。
女
「多いね」
男
「多い」
少し沈黙。
女は空を見る。
「いい天気」
男も空を見る。
雲が流れている。
女は言う。
「先に言っとくね」
男
「何を」
女
「名前」
女は少し笑う。
「私はミサキ」
男は少し驚く。
「……急だな」
ミサキ
「聞くでしょ普通」
男は少し考える。
「まあ」
ミサキ
「あなたは?」
男は少し間を置く。
剣を見る。
風が吹く。
カチャ……
男
「シュン」
ミサキは少し頷く。
「よろしく」
シュンは少し笑う。
「ここで?」
ミサキ
「ここで」
二人は少し笑う。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
その瞬間。
ミサキが消えた。
シュンは少し空を見る。
「……早いな」
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




