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62話
男は剣を見上げていた。
中央の剣の束。
何十本も地面に刺さっている。
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男は少し首をかしげる。
「……多いな」
その時、声がした。
「重そう」
男は振り向く。
女が立っていた。
女も剣を見ている。
女
「全部同時に落ちたら大変」
男は少し笑う。
「確かに」
女は剣の刃を見る。
夕日が反射している。
女
「でも」
女
「誰も触らないね」
男
「触った人はいる」
女
「抜けた?」
男
「抜けない」
女は少し笑う。
「そっか」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
女は広場を見回す。
「ここ」
女
「静かすぎない?」
男
「そうか?」
女
「うん」
女は少し考える。
「普通」
「鳥とか」
「もっと鳴く」
男は空を見る。
遠くで鳥が飛んでいる。
男
「確かに」
少し沈黙。
女が聞く。
「名前は?」
男
「タク」
女
「私は——」
その瞬間。
女が消えた。
男は中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




