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59話
男は広場の端に立っていた。
中央の剣からかなり離れた場所。
石畳はここまで続いている。
その先は草だった。
男はその境目を見ている。
石。
草。
境目はまっすぐじゃない。
少し歪んでいる。
男は足で石を踏む。
コツ。
次に草を踏む。
サッ。
「……」
その時、声がした。
「境目?」
男は振り向く。
女が立っていた。
女も地面を見る。
草と石の境目。
女
「ここで終わり?」
男
「たぶんな」
女は少し歩く。
草の上。
柔らかい。
女
「外?」
男
「かもしれない」
女は振り向く。
中央の剣を見る。
遠くに見える。
何十本もの剣。
鎖でまとめられている。
風が吹く。
カチャ……
鎖の音がここまで届く。
女
「遠い」
男
「広いからな」
女は空を見る。
雲がゆっくり流れている。
女
「ここ」
女
「広場なんだね」
男は少し笑う。
「今さらか」
女も笑う。
風が吹く。
草が揺れる。
女が聞く。
「名前は?」
男
「ナオ」
女
「私は——」
その瞬間。
女が消えた。
男は草を見る。
少し踏む。
また石を見る。
風が吹く。
遠くで鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
草と風だけが揺れていた。




