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58話
石が置かれていた。
中央の剣の近く。
小さな丸い石。
誰かがそこに置いたみたいに、ぽつんとある。
男はそれを見ていた。
しゃがみ込む。
石を指で触る。
「……」
その時、声がした。
「それ、前からあった?」
男は振り向く。
女が立っていた。
女もしゃがむ。
石を見る。
女
「誰か置いたのかな」
男
「そうかもな」
女は石を転がす。
コツ。
少し動く。
女
「丸い」
男
「転がる」
女は少し笑う。
「当たり前」
風が吹く。
中央の剣の鎖が揺れる。
カチャ……
女は剣を見る。
「相変わらず多い」
男
「多いな」
女
「これ全部」
女
「誰の剣なんだろ」
男は少し考える。
「誰かの」
女
「雑だね」
男は笑う。
風が吹く。
石が少し動く。
女が空を見る。
夕焼けだった。
「いい空」
男
「そうだな」
少し沈黙。
女が聞く。
「名前は?」
男
「マコト」
女
「私は——」
その瞬間。
女が消えた。
男は石を見る。
また少し転がす。
コツ。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
石だけが残っていた。
風が吹く。




