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臨界(仮)  作者: vastum


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58/68

58話

石が置かれていた。


中央の剣の近く。


小さな丸い石。


誰かがそこに置いたみたいに、ぽつんとある。


男はそれを見ていた。


しゃがみ込む。


石を指で触る。


「……」


その時、声がした。


「それ、前からあった?」


男は振り向く。


女が立っていた。


女もしゃがむ。


石を見る。


「誰か置いたのかな」


「そうかもな」


女は石を転がす。


コツ。


少し動く。


「丸い」


「転がる」


女は少し笑う。


「当たり前」


風が吹く。


中央の剣の鎖が揺れる。


カチャ……


女は剣を見る。


「相変わらず多い」


「多いな」


「これ全部」


「誰の剣なんだろ」


男は少し考える。


「誰かの」


「雑だね」


男は笑う。


風が吹く。


石が少し動く。


女が空を見る。


夕焼けだった。


「いい空」


「そうだな」


少し沈黙。


女が聞く。


「名前は?」


「マコト」


「私は——」


その瞬間。


女が消えた。


男は石を見る。


また少し転がす。


コツ。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


石だけが残っていた。


風が吹く。

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