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臨界(仮)  作者: vastum


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57話

男はしゃがんでいた。


石畳を見ている。


割れた石の隙間。


そこに小さな石が落ちていた。


丸い。


男はそれを拾う。


指で転がす。


広場は静かだった。


中央には剣が刺さっている。


何十本も。


鎖でまとめられていた。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男は小石を弾く。


コツン。


石は石畳を転がる。


少し進んで止まる。


男はまた拾う。


弾く。


コツン。


今度は少し遠くまで転がる。


男はそれを見ている。


風が吹く。


草が揺れる。


遠くで鳥が鳴いた。


男は立ち上がる。


中央の剣を見る。


夕日が刃に反射している。


しばらく見ている。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男はもう一度石を見る。


拾う。


少し考える。


それを剣の近くに置く。


何も言わない。


ただ置く。


男は空を見る。


雲がゆっくり流れていた。


その瞬間。


男の姿は消えた。


広場には誰もいない。


小さな石だけが残っていた。


風が吹く。

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