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臨界(仮)  作者: vastum


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60/68

60話

男は空を見ていた。


雲がゆっくり流れている。


その下に、広い石の地面。


男は眉をひそめた。


「……GPS反応しない」


スマートフォンの画面を見る。


地図は真っ白だった。


男は周囲を見る。


崩れた柱。


割れた石畳。


中央には剣が刺さっている。


何十本も。


鎖でまとめられていた。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男は剣を見て呟く。


「映画のセットか?」


その時。


足音がした。


コツ……コツ……


男は振り向く。


鎧の男が立っていた。


長剣を腰に差している。


鎧の男は周囲を見る。


「……ここは」


スマホの男

「それ俺も聞きたい」


鎧の男は男の手を見る。


光る板。


鎧の男

「魔道具か」


「スマホ」


鎧の男

「すまほ?」


男は苦笑する。


「まあ道具だ」


鎧の男は中央の剣を見る。


「戦場か」


「映画セットかと思った」


鎧の男は首をかしげる。


「えいが?」


「……通じないか」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


鎧の男は空を見る。


「空は同じだな」


男も見る。


青空だった。


「そうだな」


少し沈黙。


鎧の男が聞く。


「名は?」


「ユウタ」


鎧の男

「俺は——」


その瞬間。


鎧の男が消えた。


ユウタは目を見開く。


「……は?」


スマホを見る。


画面はまだ真っ白。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


風だけが吹いていた。

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