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臨界(仮)  作者: vastum


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55/68

55話

男は剣を見上げていた。


中央の剣の束。


何十本も刺さっている。


鎖でまとめられていた。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男は一本の柄を触る。


その時、声がした。


「それ、鳴るよ」


男は振り向く。


少年が立っていた。


「鳴る?」


少年は剣の柄を軽く叩く。


コツ。


乾いた音が広場に響く。


男は少し驚く。


「……本当だ」


男も別の剣を叩く。


コン。


少し低い音。


少年

「違う」


「違うな」


少年はまた叩く。


コツ。


「前に誰か叩いてた」


「そうなのか」


少年

「変な音してた」


男は笑う。


「音楽家かもしれない」


少年

「ここで?」


「ここで」


風が吹く。


鎖が揺れる。


カチャ……


少年は空を見る。


雲が流れている。


少年

「静かだね」


「静かだな」


少し沈黙。


男が聞く。


「名前は?」


少年

「ソラ」


「俺は——」


その瞬間。


少年が消えた。


男は剣を見る。


もう一度叩く。


コツ。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


風だけが吹いていた。

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