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臨界(仮)  作者: vastum


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54/68

54話

男はしゃがんでいた。


石畳を見ている。


中央の剣の近く。


割れた石の隙間。


小さな白い花が咲いていた。


男は指で土を触る。


「……」


その時、声がした。


「花?」


男は振り向く。


女が立っていた。


女もしゃがむ。


花を見る。


「前からあった?」


「知らない」


女は少し笑う。


「誰か植えた?」


「ここで?」


「ありえない?」


男は花を見る。


「ありえるかもな」


風が吹く。


中央の剣が揺れる。


カチャ……


女は剣を見る。


「多いね」


「そうだな」


女は一本の刃を見る。


夕日が反射している。


「これ全部」


「誰が刺したんだろ」


「わからない」


少し沈黙。


女が言う。


「でもさ」


「うん」


「この花」


「うん」


「ここで咲いてるの変だよね」


男は少し笑う。


「変な場所だからな」


風が吹く。


花が揺れる。


女は空を見る。


夕焼けだった。


「いい空」


「そうだな」


少し沈黙。


女が聞く。


「名前は?」


「リク」


「私は——」


その瞬間。


女が消えた。


男は花を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は小さく言う。


「誰が植えたんだろうな」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


花だけが揺れていた。


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