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52話
コツ、コツ。
石を叩く音がしていた。
男は剣の柄を軽く指で叩いている。
コツ。
コツ。
金属の乾いた音が広場に響く。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男はまた叩く。
コツ。
「いい音だな」
その時。
「楽器みたいだね」
声がした。
男は振り向く。
少女が立っていた。
少女は剣を見上げている。
男
「楽器?」
少女
「叩いたら鳴る」
男は少し笑う。
「確かに」
男は別の剣を叩く。
コツ。
少し違う音。
少女
「音違う」
男
「本当だな」
少女は一本の剣を軽く叩く。
コツ。
「これ高い音」
男は別の剣を叩く。
コン。
「こっちは低い」
少女は少し笑う。
「並べたら曲できる」
男
「できるかもな」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
男は適当に叩く。
コツ。
コン。
カン。
少女は少し笑う。
「変な曲」
男
「音楽家じゃないからな」
少女
「私も」
少し沈黙。
風が吹く。
少女が空を見る。
夕焼けだった。
「いい時間」
男
「そうだな」
少女
「名前は?」
男
「ハル」
少女
「私は——」
その瞬間。
少女が消えた。
ハルは剣を見る。
もう一度叩く。
コツ。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




