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臨界(仮)  作者: vastum


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51/72

51話

靴音が響いていた。


コツ……コツ……


広場は静かだった。


石畳の上を、男がゆっくり歩いている。


中央には剣が刺さっていた。


何十本も。


鎖でまとめられている。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男は剣の前で止まる。


少し首をかしげる。


「……」


その時。


「おー」


声がした。


男は振り向く。


別の男が立っていた。


旅人の格好。


男は剣を見て笑う。


「すごいなこれ」


最初の男

「そうだな」


旅人

「戦場かな」


「かもしれない」


旅人は近づく。


一本の柄を触る。


「重い」


「抜けない」


旅人

「試した?」


「試した」


旅人は少し笑う。


「やっぱりか」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


旅人は広場を見回す。


「変な場所だ」


「そうだな」


旅人

「でも嫌いじゃない」


「静かだからな」


少し沈黙。


旅人が聞く。


「ここ、来たことある?」


「ない」


旅人

「俺も」


風が吹く。


草が揺れる。


旅人が空を見る。


「いい空」


男も見る。


雲が流れている。


「旅日和だ」


旅人

「ここから出られるならな」


男は少し笑う。


その時。


旅人が消えた。


男は少しだけ驚く。


中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は小さく息を吐く。


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


風だけが吹いていた。

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