50話
風が吹いていた。
広場の草が揺れる。
石畳の上に、長い影が落ちている。
中央には剣が刺さっている。
何十本も。
鎖でまとめられていた。
カチャ……
鎖が鳴る。
男はその前に立っていた。
何も言わない。
ただ剣を見ている。
しばらく動かない。
その時、声がした。
「多いね」
男は振り向く。
女が立っていた。
女も剣を見ている。
男
「そうだな」
女は一本の剣を見る。
「全部使ったのかな」
男
「何に」
女
「戦い」
男は少し考える。
「それかもしれない」
女
「墓かもしれない」
男
「かもしれない」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
女は空を見る。
夕焼けだった。
「綺麗」
男
「そうだな」
少し沈黙。
女が聞く。
「何本あると思う?」
男は剣を見る。
「数えてない」
女
「数えた?」
男は少し笑う。
「数えた奴がいた」
女
「へぇ」
風が吹く。
草が揺れる。
女は剣を見る。
「全部抜いたらどうなるんだろう」
男
「抜けない」
女
「なんで?」
男
「そういう感じがする」
女は少し笑う。
「感じ?」
男
「感じだ」
夕日が沈みかけている。
影が長くなる。
女が聞く。
「名前は?」
男
「レオ」
女
「私は——」
その瞬間。
女が消えた。
レオは剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
レオは小さく呟いた。
「……まだ多いな」
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




