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臨界(仮)  作者: vastum


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50/67

50話

風が吹いていた。


広場の草が揺れる。


石畳の上に、長い影が落ちている。


中央には剣が刺さっている。


何十本も。


鎖でまとめられていた。


カチャ……


鎖が鳴る。


男はその前に立っていた。


何も言わない。


ただ剣を見ている。


しばらく動かない。


その時、声がした。


「多いね」


男は振り向く。


女が立っていた。


女も剣を見ている。


「そうだな」


女は一本の剣を見る。


「全部使ったのかな」


「何に」


「戦い」


男は少し考える。


「それかもしれない」


「墓かもしれない」


「かもしれない」


風が吹く。


鎖が揺れる。


カチャ……


女は空を見る。


夕焼けだった。


「綺麗」


「そうだな」


少し沈黙。


女が聞く。


「何本あると思う?」


男は剣を見る。


「数えてない」


「数えた?」


男は少し笑う。


「数えた奴がいた」


「へぇ」


風が吹く。


草が揺れる。


女は剣を見る。


「全部抜いたらどうなるんだろう」


「抜けない」


「なんで?」


「そういう感じがする」


女は少し笑う。


「感じ?」


「感じだ」


夕日が沈みかけている。


影が長くなる。


女が聞く。


「名前は?」


「レオ」


「私は——」


その瞬間。


女が消えた。


レオは剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


レオは小さく呟いた。


「……まだ多いな」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。

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