49話
石が転がった。
コツン。
広場は静かだった。
石畳の上を風が流れる。
中央には剣が刺さっている。
何十本も。
鎖でまとめられていた。
カチャ……
鎖が鳴る。
男はしゃがんでいた。
小さな石を指で弾く。
コツン。
石は転がる。
少し進んで止まる。
男はもう一度弾く。
コツン。
その時、声がした。
「遊んでるの?」
男は振り向く。
少年が立っていた。
男は肩をすくめる。
「暇なんだ」
少年
「石で?」
男
「石しかない」
少年は少し笑う。
男はまた石を弾く。
コツン。
少年が言う。
「そこまで飛ばせる?」
少年は剣の束を指さす。
男は見る。
少し遠い。
男
「無理だろ」
少年
「やってみて」
男は石を拾う。
少し狙う。
弾く。
コツン。
石は転がる。
途中で止まる。
少年
「惜しい」
男
「惜しくない」
少年は石を拾う。
しゃがむ。
弾く。
コツン。
石は転がる。
剣の前まで行く。
カチ。
鎖に当たった。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
少年は少し笑う。
「勝ち」
男
「子供の勝ちだな」
少年は空を見る。
夕焼けだった。
男も見る。
「いい空だ」
少し沈黙。
少年が聞く。
「名前は?」
男
「ユウ」
少年
「ぼくは——」
その瞬間。
少年が消えた。
男は石を見る。
もう一度弾く。
コツン。
石は少し転がる。
男は小さく笑った。
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




