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臨界(仮)  作者: vastum


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48/68

48話

影が長く伸びていた。


夕日が低い。


広場の石畳に、男の影が落ちている。


男はそれを見ていた。


自分の影。


細く、歪んでいる。


男は少し歩く。


コツ……コツ……


影も動く。


その時、声がした。


「影、気に入った?」


男は振り向く。


女が立っていた。


男は少し笑う。


「気に入ったわけじゃない」


「ずっと見てた」


「暇だからな」


女は広場を見回す。


石畳。


崩れた柱。


中央の剣。


何十本も刺さっている。


鎖でまとめられていた。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


女は剣を見る。


「変な場所」


「そうだな」


「戦場?」


男は首を振る。


「影が静かすぎる」


「影?」


男は石畳を指さす。


剣の影。


鎖の影。


夕日で長く伸びている。


「戦場なら」


「影が乱れる」


女は少し考える。


「なるほど」


風が吹く。


影が揺れる。


カチャ……


女は影を踏む。


「消えない」


男は笑う。


「そりゃな」


「当たり前か」


少し沈黙。


夕日が少し沈む。


影がまた長くなる。


女が聞く。


「名前は?」


「カイ」


「私は——」


その瞬間。


女が消えた。


カイは影を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


カイは小さく笑った。


「影だけ残るかと思った」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。


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