42話
男は立っていた。
広場の端。
石畳を見ている。
割れ方を観察していた。
「……古い」
風が吹く。
中央を見る。
剣。
何十本も地面に刺さっている。
鎖でまとめられている。
カチャ……
鎖が鳴る。
男はゆっくり近づく。
一本の柄に触れる。
冷たい。
その時。
足音がした。
コツ……コツ……
男は振り向く。
もう一人の男が立っていた。
同じくらいの年。
同じくらいの背丈。
だが服装は違う。
剣士だった。
剣を腰に差している。
二人は少し見つめ合う。
剣士が言う。
「ここどこだ」
男
「知らない」
剣士は中央の剣を見る。
「戦場?」
男
「違うと思う」
剣士
「なんで」
男は石畳を見る。
「壊れ方」
剣士は笑う。
「変な見方だな」
男も少し笑う。
「よく言われる」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
剣士は空を見る。
「いい空だ」
男も見る。
青空だった。
「そうだな」
少し沈黙。
剣士が聞く。
「名前は?」
男
「セリウス」
剣士は少し驚く。
「……へぇ」
男
「どうした」
剣士は笑う。
「偶然だな」
男
「何が」
剣士は言う。
「俺もセリウスだ」
沈黙。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は少し考える。
剣士は笑う。
「世界は広いな」
男も笑った。
「そうだな」
少し沈黙。
剣士
「変な場所だ」
男
「面白い場所だ」
その瞬間。
剣士が消えた。
男は周囲を見る。
中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は小さく呟く。
「……確かにな」
次の瞬間。
男も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




