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40話
男は立っていた。
広場の中央。
剣の束の前で。
何十本もの剣が地面に刺さっている。
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男はその音を聞いていた。
「……まだあるのか」
一本の柄に触れる。
冷たい。
男は少し笑った。
「昔も触ったな」
広場を見回す。
割れた石畳。
崩れた柱。
遠くの壁。
何も変わっていない。
男は空を見る。
夕焼けだった。
「いい色だ」
昔もここで見た。
あの時は
まだ若かった。
そして
自分は死んだと思っていた。
男は小さく息を吐く。
「不思議なもんだ」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は剣を見る。
「墓かと思った」
何十本もの剣。
だが今は違う気がする。
「……違うな」
男は石畳に腰を下ろす。
少し考える。
そして小さく呟いた。
「待合所か」
誰の。
それは分からない。
男は立ち上がる。
空を見る。
星が出始めていた。
「また会うかもな」
誰に言ったのか。
昔この場所で会った兵士か。
それとも——
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
男の姿は消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




