表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臨界(仮)  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/68

39話

声が響いていた。


静かな広場に。


ゆっくりとした歌だった。


男が歩いている。


石畳の上を。


コツ……コツ……


男は歩きながら歌っていた。


低い声。


どこか古い歌。


広場には誰もいない。


崩れた柱。


割れた石畳。


風が吹く。


歌は止まらない。


男は中央に近づく。


剣が見えた。


何十本も。


地面に突き刺さっている。


鎖でまとめられている。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男はその前で立ち止まる。


そして歌を止めた。


「……へぇ」


しばらく剣を眺める。


一本の柄に触れる。


冷たい。


男は少し笑う。


「立派な墓だ」


誰の墓なのかはわからない。


だが


「悪くない」


男は石畳に腰を下ろす。


空を見る。


夕焼けだった。


男はもう一度歌い始める。


今度は少し小さく。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


歌は広場に響く。


誰もいない広場に。


しばらく歌っていた。


歌が終わる。


男は空を見る。


「いい場所だ」


その時。


足音がした。


振り向く。


少女が立っていた。


少女は少し驚いている。


「……歌?」


男は笑う。


「そう」


少女

「ここで?」


「誰も怒らない」


少女は少し笑った。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


少女が空を見る。


「綺麗な夕日」


「いい歌日和だ」


少女は少し考える。


「もう一回歌って」


男は肩をすくめる。


「いいぞ」


男が口を開く。


その瞬間。


少女が消えた。


男は歌いかけて止まる。


「……」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は小さく笑う。


「じゃあ次の客に」


そして歌を続ける。


その瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ