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臨界(仮)  作者: vastum


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36/67

36話

女は剣を見ていた。


中央に刺さった剣の束。


何十本も。


鎖でまとめられている。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


女はゆっくり歩く。


石畳の上。


コツ……コツ……


剣の前で止まる。


一本の柄に触れる。


冷たい。


女は少し笑った。


「変わってない」


広場を見回す。


割れた石。


崩れた柱。


遠くの壁。


何も変わっていない。


女は空を見る。


夕焼けだった。


「綺麗」


昔も同じだった。


あの時は


小さかった。


広場も大きく感じた。


女は剣を見上げる。


「懐かしいな」


風が吹く。


鎖が揺れる。


カチャ……


女は石畳に座る。


剣の束を見る。


少し考える。


そして小さく呟いた。


「またね」


誰に言ったのか。


自分か。


それとも——


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


女は立ち上がる。


「元気にしてるかな」


次の瞬間。


女の姿は消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。


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