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臨界(仮)  作者: vastum


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35/68

35話

男は立っていた。


広場の中央。


剣の束の前で。


何十本もの剣が地面に刺さっている。


鎖でまとめられていた。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男はそれを見上げる。


そして小さく笑った。


「……懐かしい」


その時。


石畳を踏む音がした。


コツ……コツ……


男は振り向く。


女が立っていた。


旅人の格好。


女は広場を見回す。


「……どこ?」


男は答える。


「広場だ」


「それは見ればわかる」


男は少し笑う。


女は中央の剣を見る。


「戦場?」


男は首を振る。


「違う」


「遺跡?」


「それも違う」


「じゃあ何」


男は剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は言った。


「残り物だ」


女は眉をひそめる。


「何の」


男は少し考える。


そして肩をすくめた。


「世界の」


「意味わかんない」


男は笑った。


「俺もだ」


風が吹く。


草が揺れる。


女が空を見る。


夕焼けだった。


「綺麗」


男も見る。


「そうだな」


少し沈黙。


女が聞く。


「ここ知ってるの?」


男は答えない。


ただ剣を見ている。


「さっき懐かしいって言った」


男は少し笑う。


「そうだっけ」


「言った」


男は空を見る。


「気のせいだ」


女は呆れた顔をする。


「変な人」


「よく言われる」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


女が聞く。


「名前は?」


「知らない方がいい」


「なんで」


男は笑う。


「面白いから」


その瞬間。


女が消えた。


男は剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は小さく呟く。


「……まだ残ってるか」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。


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