34話
男はしゃがんでいた。
石畳に小さな金属の棒を当てる。
コン、と軽い音がした。
「……硬い」
男は満足そうに頷いた。
立ち上がる。
周囲を見る。
広場だった。
かなり広い。
石畳は均一ではない。
少しずつ高さが違う。
「古い構造だな」
男は中央を見る。
剣が刺さっていた。
大量に。
何十本も。
しかも鎖でまとめられている。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男は目を輝かせた。
「これは面白い」
近づく。
一本の柄を触る。
冷たい。
次に鎖を触る。
「重い」
男はポケットから小さな器具を出す。
鎖に当てる。
コン。
「鋼か」
男は剣の配置を見る。
少し歩く。
角度を変える。
また見る。
「……」
しばらく黙る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は小さく呟いた。
「これ」
もう一度剣を見る。
「固定してるのか」
何を。
それは分からない。
だが
「意味がある配置だ」
男は石畳を見る。
剣。
鎖。
配置。
「……面白い」
その時。
足音がした。
振り向く。
青年が立っていた。
青年は広場を見回す。
「……ここどこ?」
男は答える。
「わからない」
青年
「遺跡?」
男
「たぶんな」
青年は剣を見る。
「戦場かな」
男は首を振る。
「違う」
青年
「どうして」
男は鎖を指さす。
「これは偶然じゃない」
青年
「え?」
男
「誰かが作った」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
青年は空を見る。
「でも静かだね」
男
「それも面白い」
少し沈黙。
青年が聞く。
「名前は?」
男
「レン」
青年
「俺は——」
その瞬間。
青年が消えた。
レンは少し驚いた。
しかしすぐ剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は笑った。
「ますます面白い」
次の瞬間。
男も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




