37話
男は剣を見ていた。
中央に突き刺さった剣の束。
何十本もある。
鎖でまとめられている。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
男は目を細める。
「……いい剣だ」
ゆっくり近づく。
柄を握る。
引く。
動かない。
男は笑う。
「そりゃそうか」
鎖を見る。
太い。
古いが、まだ強い。
男は腰からナイフを取り出す。
鎖を叩く。
カン。
金属音が響く。
「切れないか」
男はもう一度叩く。
カン。
カン。
「硬いな」
その時。
声がした。
「持って帰る気?」
男は振り向く。
少年が立っていた。
男は肩をすくめる。
「いい剣だからな」
少年
「抜けないよ」
男
「抜くんじゃない」
少年
「え?」
男は鎖を指さす。
「切る」
少年は少し驚く。
「なるほど」
男はナイフをしまう。
今度は剣を見る。
「一本くらい減っても」
その時。
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
男は少し考える。
剣を見る。
鎖を見る。
そして笑った。
「……やめた」
少年
「え?」
男
「なんとなくだ」
少年
「変なの」
男
「そうかもな」
風が吹く。
草が揺れる。
男が空を見る。
青空だった。
「いい昼だ」
少年
「うん」
少し沈黙。
男が聞く。
「名前は?」
少年
「ケン」
男
「俺は——」
その瞬間。
少年が消えた。
男は中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は小さく笑った。
「盗まれない理由があるんだろうな」
次の瞬間。
男も消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。




