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臨界(仮)  作者: vastum


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29/68

29話

泣き声がしていた。


静かな広場に、

小さな嗚咽が響いている。


少女がしゃがみ込んでいた。


両手で顔を覆っている。


肩が震えていた。


石畳の隙間から生えた草が

風で揺れる。


少女は気づいていない。


ここがどこなのかも。


さっきまで


大きな炎があった。


村が燃えていた。


人が叫んでいた。


少女は目をぎゅっと閉じる。


「……やだ」


涙が落ちる。


ぽつり。


石に染みた。


風が吹く。


その時、少女は気づいた。


泣き声が響く。


広い。


あまりにも広い。


少女は顔を上げた。


石の広場。


遠くまで何もない。


壊れた柱。


崩れた壁。


「……?」


その時。


中央に何かが見えた。


少女は立ち上がる。


ゆっくり歩く。


近づく。


剣だった。


たくさん。


何十本も。


地面に刺さっている。


鎖でまとめられている。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


少女はぼんやり見ていた。


「……」


戦場みたいだった。


でも


血の匂いはない。


焦げた匂いもない。


ただ静かだった。


少女は剣の前に座る。


涙を拭く。


空を見る。


青かった。


「……」


しばらく沈黙。


風が吹く。


草が揺れる。


少女は小さく呟く。


「……ここなら」


誰も燃えない。


誰も叫ばない。


少女は目を閉じる。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


次の瞬間。


少女の姿は消えた。


広場には誰もいない。


風だけが吹いていた。


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