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臨界(仮)  作者: vastum


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28話

男は歩いていた。


石畳の上を。


コツ……コツ……


靴音が広場に響く。


男は立ち止まる。


中央を見る。


剣。


何十本もの剣。


鎖で束ねられている。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男は小さく笑った。


「やっぱりここか」


前にも来た。


ずっと昔だ。


まだ剣を振り始めた頃だった。


あの時は驚いた。


だが今は違う。


男は剣を眺める。


「まだ抜けないか」


柄を掴む。


引く。


動かない。


「まあいい」


男は手を離した。


広場を見回す。


石畳。


崩れた柱。


割れた壁。


昔と変わっていない。


「時間も関係ないのか」


男は空を見る。


夕焼けだった。


「綺麗だ」


昔も同じだった。


風が吹く。


鎖が揺れる。


カチャ……


男は石畳に座る。


中央の剣を見る。


「誰の剣なんだろうな」


答えはない。


ただ風が吹く。


少し沈黙。


男が小さく呟く。


「……強くなったぞ」


それは誰に言ったのか。


自分か。


それとも——


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は立ち上がる。


「じゃあな」


次の瞬間。


男の姿は消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。


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