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臨界(仮)  作者: vastum


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26話

腹の音が鳴った。


ぐぅ。


男は立ち止まる。


「……腹減った」


石畳の広場だった。


広い。


割れた石の隙間から草が生えている。


風が吹く。


男は周囲を見回した。


「さっきまで宿屋だったのに」


歩く。


コツ……コツ……


その時、中央に何か見えた。


剣だった。


一本ではない。


何十本も地面に刺さっている。


鎖でまとめられていた。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男は近づく。


「なんだこれ」


一本の柄を触る。


冷たい。


「売ったら金になりそうだな」


その時。


声がした。


「売れないと思うよ」


男は振り向く。


少女が立っていた。


パンを食べている。


男の目が止まる。


「……パン」


少女

「うん」


「それ」


少女

「うん?」


「うまい?」


少女は少し笑う。


「普通」


男の腹がまた鳴る。


ぐぅ。


少女

「お腹すいてる?」


「すごく」


少女はパンを見た。


少し考える。


半分ちぎる。


男に差し出す。


「どうぞ」


男は目を丸くした。


「いいのか?」


少女

「うん」


男は受け取る。


一口食べる。


「……うまい」


少女

「普通だよ」


男は笑う。


「旅の飯は全部うまい」


少女はパンをかじる。


二人は中央の剣を見る。


「これ誰のだろう」


少女

「知らない」


「抜けるかな」


少女

「抜けないと思う」


男は柄を掴む。


引く。


動かない。


「ほんとだ」


少女は笑う。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男が空を見る。


青空だった。


「いい昼だ」


少女

「うん」


少し沈黙。


男が聞く。


「名前は?」


少女

「ミオ」


「俺は——」


その瞬間。


少女が消えた。


男はパンを見た。


「……あれ?」


周囲を見る。


誰もいない。


中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男はパンをもう一口食べる。


「……不思議な昼飯だ」


次の瞬間。


男も消えた。


広場には誰もいない。


風だけが吹いていた。


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