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臨界(仮)  作者: vastum


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25/69

25話

金属が鳴った。


ギン、と鋭い音。


男は剣を抜いていた。


広場の中央。


鎖に束ねられた剣の前で、

刃が月の光を反射している。


その向かいに女が立っていた。


短剣を構えている。


二人は睨み合っていた。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


女が言う。


「……どこ」


男は答えない。


視線を外さない。


女がもう一度言う。


「ここどこ?」


「知らない」


「追ってきた?」


「知らん」


沈黙。


女はゆっくり短剣を下ろした。


「……違うみたい」


男も剣を下ろす。


「俺もそう思う」


二人は広場を見回す。


広い石の広場。


崩れた柱。


そして中央の剣。


女が言う。


「すごい数」


「そうだな」


女は近づく。


鎖に触れる。


カチャ……


「重い」


「かなり古い」


「戦場かな」


男は首を振る。


「戦場なら血の匂いがする」


女は少し驚く。


「嗅ぎ分けるの?」


「仕事柄な」


風が吹く。


鎖が揺れる。


カチャ……


女が空を見る。


星が広がっていた。


「綺麗」


男も見上げる。


「……ああ」


少し沈黙。


女が言う。


「さっきはごめん」


「俺もだ」


「刺客だと思った」


「俺もだ」


二人は少し笑った。


風が吹く。


草が揺れる。


男が聞く。


「名前は?」


「サラ」


「俺は——」


その瞬間。


女が消えた。


男は周囲を見る。


「……」


中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は剣を鞘に戻す。


「妙な場所だ」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


星と風だけが残っていた。


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