25話
金属が鳴った。
ギン、と鋭い音。
男は剣を抜いていた。
広場の中央。
鎖に束ねられた剣の前で、
刃が月の光を反射している。
その向かいに女が立っていた。
短剣を構えている。
二人は睨み合っていた。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
女が言う。
「……どこ」
男は答えない。
視線を外さない。
女がもう一度言う。
「ここどこ?」
男
「知らない」
女
「追ってきた?」
男
「知らん」
沈黙。
女はゆっくり短剣を下ろした。
「……違うみたい」
男も剣を下ろす。
「俺もそう思う」
二人は広場を見回す。
広い石の広場。
崩れた柱。
そして中央の剣。
女が言う。
「すごい数」
男
「そうだな」
女は近づく。
鎖に触れる。
カチャ……
「重い」
男
「かなり古い」
女
「戦場かな」
男は首を振る。
「戦場なら血の匂いがする」
女は少し驚く。
「嗅ぎ分けるの?」
男
「仕事柄な」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
女が空を見る。
星が広がっていた。
「綺麗」
男も見上げる。
「……ああ」
少し沈黙。
女が言う。
「さっきはごめん」
男
「俺もだ」
女
「刺客だと思った」
男
「俺もだ」
二人は少し笑った。
風が吹く。
草が揺れる。
男が聞く。
「名前は?」
女
「サラ」
男
「俺は——」
その瞬間。
女が消えた。
男は周囲を見る。
「……」
中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は剣を鞘に戻す。
「妙な場所だ」
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
星と風だけが残っていた。




