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臨界(仮)  作者: vastum


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24話

剣の柄を握る。


ゆっくり引く。


……動かない。


男は小さく笑った。


「やっぱりか」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は手を離した。


中央には剣が刺さっている。


何十本も。


それらが鎖で束ねられていた。


男は少し距離を取って眺める。


「相変わらずだな」


昔と同じだった。


広い石の広場。


割れた石畳。


遠くの崩れた柱。


男はゆっくり歩く。


コツ……コツ……


剣が腰で揺れた。


昔より軽く感じる。


その時。


風が強く吹いた。


鎖が揺れる。


カチャ……カチャ……


男は空を見上げる。


夕焼けだった。


「……いい空だ」


昔もここで見た。


確か——


旅に出たばかりの頃だった。


剣もまだ重かった。


何も知らなかった。


男は小さく笑う。


「懐かしいな」


石畳に腰を下ろす。


中央の剣を見る。


「誰が刺したんだろうな」


昔は不思議だった。


今は少し違う。


「……まあいい」


男は立ち上がる。


その時。


風が吹いた。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は空を見る。


星が出始めていた。


「星が綺麗だ」


少し沈黙。


男が小さく呟く。


「約束は守ったぞ」


そして


次の瞬間。


男の姿は消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。

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