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臨界(仮)  作者: vastum


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21/71

21話

靴の裏で石が鳴った。


乾いた音だった。


男は足元を見る。


石畳。


だが砂が積もっている。


「……砂?」


男はしゃがみ込んだ。


指で触る。


確かに砂だ。


しかし、周りは石の広場だった。


遠くまで続く石畳。


ところどころ割れて、

草が生えている。


男は立ち上がった。


「さっきまで砂漠だったのに」


風が吹いた。


砂が少しだけ流れる。


その向こうに


剣が見えた。


男は目を細める。


「なんだありゃ」


中央に、剣が刺さっていた。


一本じゃない。


十本でもない。


何十本も地面に突き刺さっている。


それらが鎖でまとめられていた。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


男は近づく。


「……すげぇ」


柄の一本に触れる。


冷たい。


「こんな武器の山、見たことねぇな」


その時。


背後で足音がした。


男は振り向く。


背の高い女が立っていた。


砂よけの布を巻いている。


女も周囲を見回していた。


「……どこ?」


男が笑う。


「それ、俺も聞きたい」


女は剣を見る。


「戦場?」


「たぶん」


「でも砂漠じゃない」


男は足元を見る。


石畳。


砂が少しだけ溜まっている。


「ここだけ別の場所だな」


女は中央の剣を見る。


「盗賊でもここは来ない」


「だろうな」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


女が空を見る。


「いい空」


男も見上げる。


青空だった。


「……ああ」


少し沈黙。


男が聞く。


「どこから来た」


「隊商」


「俺もだ」


女は少し笑う。


「じゃあ同業者」


「護衛だ」


「私も」


風が吹く。


砂が少し舞う。


男が言う。


「妙な場所だ」


「うん」


「でも嫌いじゃない」


「静かだから」


男は頷いた。


少し沈黙。


女が聞く。


「名前は?」


「ダン」


「私は——」


その瞬間。


女が消えた。


ダンは目を瞬いた。


「……おい」


周囲を見る。


誰もいない。


中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は空を見た。


「まぁいい」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には風だけが残っていた。


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