20話
夕方だった。
空はゆっくりと赤く染まり始めている。
石畳の広場に、風が吹いていた。
遠くで鳥が鳴いている。
中央には剣が刺さっている。
何十本もの剣が地面に突き立ち、
錆びた鎖で束ねられていた。
カチャ……
鎖が揺れる。
その近くに、一人の男が立っていた。
古い鎧。
背には折れた剣。
男は中央の剣を見上げている。
「……変わった場所だ」
一本の柄に触れる。
「こんな戦場は見たことがない」
その時。
石畳を踏む音がした。
振り向く。
若い兵士が立っていた。
まだ少年に近い。
兵士は広場を見回す。
「……ここどこだ」
男が答える。
「知らん」
兵士は驚く。
「あなたも?」
男は頷く。
「気づいたらここにいた」
兵士は中央の剣を見る。
「すごい数だ」
男
「そうだな」
兵士は鎖に触れる。
カチャ……
「重い」
男
「かなり古い」
兵士
「戦場かな」
男は少し考える。
「そうかもしれん」
兵士は空を見る。
夕焼けだった。
「綺麗だ」
男も空を見る。
「……ああ」
少し沈黙。
風が吹く。
草が揺れる。
兵士が聞く。
「戦ってきたんですか」
男は頷く。
「長いことな」
兵士
「強そう」
男は笑う。
「もう終わった」
兵士
「え?」
男は中央の剣を見る。
「俺は死んだ」
兵士は固まる。
「……え?」
男は笑う。
「最後の戦場でな」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
兵士は困った顔をする。
「じゃあここ」
男
「さあな」
兵士
「死後の世界?」
男
「違う気がする」
夕日が沈み始めていた。
兵士が聞く。
「名前は?」
男
「ガレス」
兵士
「俺は——」
その瞬間。
兵士が消えた。
ガレスは中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は空を見る。
「いい夕焼けだ」
次の瞬間。
ガレスも消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




