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謁見

 控えの部屋で待つこと半日。だいたい、ろくな話しとは思えない、早く済まして帰りたいので酷く長い時間に感じる。



「ウィル様、どうぞこちらに」


やっとか。


国王の顔は、魔法学院の式典の時に1度見ただけだ。お偉いさんの事など全く知らない。しかし、何時お偉いさんのフェイクライフを創るか判らないので顔は必死で覚える事にした。


アーサーは謁見の間の入口付近に控えさせ、俺は貴族の作法に則って挨拶をし、国王の前に跪いた。


「そなたがウィルと申す者か?」


「はい、左様で御座います」


ウエリントン子爵が言っていたっけな。女をあてがわれ、美味いものを食べているだけあって、肌はツヤツヤしているが知性は感じられないし、身体はぶよぶよだ。確かにこれでは期待出来ない。


「リベレルの葉を使用したポーションを売っているとか。そのような貴重な物を王宮以外で使うのは不敬である。王宮のみに納めるがよい」


へっ?何言ってんだ、この人。


「それは王宮以外で売るな、と言う事で御座いますか?」


「そうじゃ」


「私は主人の命によりエドオリオの街にてリベレルの葉のポーションを商っております。主人の許し無く勝手な行いは出来ません」


「ほほう、そなたの主は誰じゃ?」


「ハミルトン王国の王族の血筋の方で御座います」


「なんと!」


あっ、この人は知ってる。ベンジャミンの視覚を通して見た事がある。反ガレキーニ派のサラン公爵だ。


「陛下、余り無理強いは宜しくないかと」

「う、うむ」


「何を言うか、サラン公爵。王族とは言え、よその国の者が我が国で商売をするのであれば、この程度の事は考えてもらわなくては陛下の面子がたたぬ」


「しかし御禁制の品でもあるまい。商売とは平等で有るべき物、我が国の品位が疑われますぞ。それに、つまらぬ事で揉めて我が国に貴重なリベレルの葉のポーションが手に入らなくなったらどうするのです?」


「ぐぬぬ」


「陛下。どうか、お考え直しを」


「う、うむ。そうじゃな、サランの言う通りかもしれんな。今一度、考えるとしよう」


「はっ、ありがとう御座います」



ーーーー


下らない事で半日潰してしまったな。でもサラン公爵はカッコ良かった。



「失礼致しますウィル様、サラン公爵が少しお話ししたいと申しております。宜しいでしょうか?」


「は、はい」


俺に何の用だろう?


「こちらで御座います」


通された部屋にサラン公爵がいる。挨拶もそこそこに公爵が切り出した。


「ウィル君はファルガ男爵のご子息だと聞いたのだが?」


「は、はい」


「そうか、……残念だった。君の父上を護る事が出来なかった。許してくれ」


「何を仰るんです。頭を御上げ下さい」

「君の父上は立派な方だった。今はどちらに?」

「地元のガベラの方へ行きました」


「そうか。それで君は何でまたハミルトン王国の王族と知り合いに?」


「それは、その……色々と有りまして」

「うむ、言いにくい事も有るだろう。すまない」


「いえ、そのお方を盗賊から助けた事が縁で」


「なるほど、君は中々の腕前の様だ。後ろの仮面の方もただならぬ雰囲気だしな」


「お恥ずかしいです」


「城の者が、これからも色々言ってくるかもしれない、気をつけてくれ。何か有ったら頼ってくれ、これを渡しておこう」


「ありがとう御座います」


俺は紋章の入った短剣を貰った。




ーーーー


「え~、そんな事を言われたの、信じられないわ」


「どんだけボンクラが揃っているんだ」

「それで何と答えたの?」


「そ、それは例の王族の血筋の主人に聞かないとって……」


「好きねぇ」


「仕方ないだろ、それしか思いつかないのだから」


「で、何て?」

「そしたら、サラン公爵が助けてくれたんだ」


「そうでしたか」


「お陰で公爵と繋がりが持てた」


俺はサラン公爵から貰った、シュタインベック家の紋章が刻まれた短剣を皆に見せた。


「凄いじゃない」

「御家再興の足掛かりになるな」


「お馬鹿な側近と国王を何とかしないとね」

「難関はバレタ公爵ですね」


「どっちにしても、いきなりは代えられない。少しずつ味方を増やして行こう」




しょうもない謁見の後は特に何事も起こらなかったのだが。


「あの男、またいるわね」

「ここを見張ってる感じだな」


「ハイザの手下じゃないの?」

「ホントに親子揃って、ろくなものじゃない」


「全くだ」




その夜、防犯用の魔道具がひさびさに反応した。屋敷に侵入した所の魔道具は破壊されている。いつものザコではない。サーチで相手を探す。


居た。2階のフレアの部屋の前だ。フレア個人を狙っているなら、ハイザの仕業ではないな。


気づいたサユリカも来たので2階へ向かう。2階のタクト達とフレアも気づいている筈なので大丈夫だと思うが。


階段を上りきった所で侵入者が魔法を放った。閃光が走りフレアの部屋の扉がぶち破られる。


「ライト!」


俺は灯りをつけると、黒覆面の男とフレアが剣を交えていた。予め打ち合わせていた通り、拘束する事を優先する。


『バインド!』


魔法名を口に出さず拘束魔法を唱えるが、黒覆面の男に作用しなかった。


「くそっ」


魔法防御の魔道具か?フレアは剣術は得意な方ではない。圧されている。アーサーを出すか?


「ブレイク!」


一瞬、空間が歪んだ気がした。アリスのスキルか?


「今です!ウィル、その男に拘束魔法を」

「は、はい。バインド!」


「くっ」


黒覆面の男が、呻きと共に廊下に転がった。


「何者だ?」

「……」


「サユリカ」

「はい」


サユリカが女王様の鞭を取り出し、ゆっくりと黒覆面の男の前に立った。お~怖っ!



いつも読んでくださりありがとう御座います。


面白いと感じられましたら、下段に有ります評価の☆星やブックマークを付けて貰えると嬉しいです。



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