タールの戦い3
「全軍これよりタール草原へと向かう」
黄色に近いような鎧――マガト・プランナーを先頭にオルデス王国第一軍が進み始めた。この部隊はマガト個人の軍とマガトの恩恵を受けている者達、マガトに顔を売りたい者達で構成されている。マガトの財力の凄さがひと目でわかるだろう。なぜならこの軍の武器や鎧などは王国騎士団よりも明らかに質が高い。質が高いからと言って腕まで良いとは限らないがそれでも少しの腕の差など埋めることのできるほどだ。
「我らも続く。進むぞ」
青髪の男――レオン・エヴァレット率いる第二軍も進み始める。主にレオン直属の王国騎士団員と城塞都市エルドラの守兵の一部に義勇兵、傭兵、冒険者などの混合部隊だ。指揮はレオンが主にとり、レオン直属の王国騎士団員がそれを伝えたりそれぞれの小隊長を担うような形をとっている。混合部隊なので各人、武器や防具は様々である。魔法が使える者は事前に報告がされており、できるだけ均等に割り振られている。事前の調査で今回は魔法が通りにくい相手ということが予想されているためそこまで魔法を扱える者達に気を配ってはいない。
ハートは足を進める。天気は快晴だ。上を眺めそして少しだけ後ろを振り返る。見えているモノはもちろん多くの人――ハートの後ろに続く戦争に参加する列である。それと小さく見える城塞都市エルドラ。
『なあ。もし負けたら俺たちどうなるんだ?』
「捕虜になる――――」
一般的に戦争中、戦争後の敗戦者は捕虜として扱われる。強さが価値観の上位にくるため種族関係なく女だろうが強ければ剣を持ったり前に出たりするのは当たり前だ。しかしながら、女は女の体をしている。それが相手にもよるが捕まった場合は戦争に限らず悪い扱いしか受けないのも事実だ。多くの者は捕まれば価値の無い者と判断され時間と共に解放、釈放される。いつまでも抱えていても単なる穀潰ししかならないからだ。穀潰しを無償で養うほど金銭的余裕はない。また捕虜の中の一部には理由によるが殺される者もいる。では捕虜の価値とはなんであろうか。敗戦者――捕虜にさっさとした方が敵の情報を聞きやすい。聞き方は尋問、拷問、金銭的解決などいろいろあるがただでさえ情報が中々不安定供給なこの世界では手に入れただけで貴重なモノとなる。その情報が勝敗に大きく絡んでくることがある。捕虜とは情報そう思ってもいいかも知れない。ただ捕虜になるのは恥辱と思っている者もいる。何かしらの誇りを持っている、誰かしらな個人に対して忠誠を誓っている、単にプライドの問題、この辺が該当するならば当てはまるだろう。そういう者は中々投降しない。
『ならアイツは俺等よりも価値があるってことか』
遠くにいるレオンやマガト達に指を向ける。
「そうなるな」
『俺は無価値で良かったわ』
「…そうなのか?」
『何も知らない雑魚だろ俺なんて』
「いや…」
物理的に限定だが何発も命を刈り取る一撃を受け続けた価値にハートが気づくことはない。それが種族の、いや強制的にも与えられた能力だからだ。忘れているもいうよりも当たり前となっていて意識が向かないといったほうが正解だろう。
仮に戦争中に捕虜にできたとする。強さ的。権力的。またその両方か。そのような名がしれた者を捕虜にできたらどうなるだろうか。まず戦争中にそれができたであろうなら敵の戦意を大きく下げることができる。「○○様がやられた?そんなバカな――」「――我々は一体どうすれば‥」戦意下げさせれば勝敗をつけるのに時間が短くなることが多い。自軍の士気、精神面、また物資や食料などにも余裕がでてくる。それ故、勝ちに近づくことができる。
戦争後はどうだろうか。それらの身代金――金銭的な要求である。やはり戦争をするのにもお金はかかる。戦後処理にも絡んでくるがそれが第一になることは間違いない。例外もある。その者自身に何かしらの価値がある者だ。それが強さであるとは限らないが即戦力を求めることは多い。レオンなどを捕虜にできた場合はまずは莫大な金銭を要求し、それに応えられないのならば傘下として下るように要求する。後者は要求というより結果的に強制であるがそうすることもある。




