影3
「わっはっはー」
ピリついていた空気を切り裂くような大きな声が。
――笑い声
すでに老いが進んでいるのはひと目でわかる。白い髪の毛?いや老いた白髪というべきか。短めに老いた白髪は刈られている。年齢にして70代。右の眉毛付近から目にかけ鼻までに大きな傷跡。着ているモノはゆったりとした長めの白いローブ。見た目からしてこの中では1番の年長者だ。彼の横に長い木でできた杖が机に寄りかかっている。両手の全ての指には形の違う指輪がそれぞれはめられている。おそらく魔道具だろう。これらだけで魔法使いだとわかる。その両手を笑い声と共に大きく何度も叩く。叩く度に指輪同士も当たりガシャっと音を立て笑い声に混じる。
「シズカニシロ」
その笑い声に続けてとても低い声で別の男が口を開いた。
全身をフルプレートの鎧で固めている。鎧の色は赤い。薄暗い中でも色合いから金属の重厚感が伝わってくるのは確かだ。話し合いの場だというのに頭部まできっちりとフルフェイスの兜をつけている。もちろんこちらも赤色だ。フルフェイスから見える目の色は緑色に揺れている。彼の横には大きな大剣が。
一人目の老人がウェスター・ロジック・ヴァンガード。
二人目の全身フルプレートがイミルである。
「わっはっはー若いもんは激しいのうー」
ウェスターはゾルダに笑みを向ける。
その笑顔に圧を感じたゾルダはウェスターを睨みつける。が笑顔と笑い声に圧されたと聞こえるように小さく舌打ちをして殺気を放つのをやめた。それらを待っていたとばかりに、再び中央に座る男が喋り始めた。
「―――と以上だ。後は各人よろしく頼む。では解散」
席についていた者達が光りと共にいなくなっていく。その中でユーズがカミーラに対して声をかける。
「あっそうだ!カミーラ。お願いがあるんだけど‥」
「なあに?ユーズ」
返事をすると机の上からでもわかる大きな乳房が揺れる。
「僕の―――」
「わかったわ報酬は――」
「―――でいいかな?」
少しだけ不満げな顔をするカミーラ。
それに気づいたユーズは必死に頼み込む。
「――なんだよ。お願いだよーカミーラ」
ユーズは頭を机に何度もぶつけながら頼み続ける。
カミーラはその光景に小さく笑う。
「仕方ないわねー。貸しだからね」
ユーズは額を赤くしながら元気強く返事をする。
「ほんと?ありがとカミーラ。連絡は【言霊石】でお願いね。それじゃそうゆうことで」
一瞬にしてユーズは席から消えていく。
用が終わったという具合に。
「ほんとしょうがない坊やね」
それだけ言うとカミーラも席から消えていく。
視界が戻ると先程の酒場の部屋に戻っていた。カミーラは立ち上がり部屋を出る。そして酒場の店主の元に向かう。
「ごめんなさいね。店主さん。帝国との戦争っていつから始まるのか知ってらっしゃる?」
「具体的にはわからないが後少しでー「それなら後2日だ」」
店主が答えようとした横からカウンターに座っていた小汚い男が男がカミーラの質問に答える。
男の方にカミーラは美貌を向ける。
「あら?あなた詳しいの?」
小汚い男は人差し指と親指で輪っかを作りカミーラに見せた。
「これ次第だ」
小汚い男はヘラヘラと笑う。
カミーラは胸の谷間から硬貨を取り出し男の手の平に優しく置く。
「どうも。話の分かる美人さんのようで」
小汚い男は先程のまでヘラヘラしていた顔が嘘のように思えるくらいに真面目な顔つきで話し始める。
「――だ。城塞都市エルドラに向かうならかなり急いだ方がいい」
「他の情報も教えてくれるのかしら?例えば強い男とか」
小汚い男は驚く表情をする。
「強い男?そんなもんそこら中にいすぎて教えられねーよ。まあ戦争に関して言えば、王国側はレオン・エヴァレット、帝国側はギヴン・ゲルドガルド、シュメールこんなところか。これはさっき仕入れた情報なんだが王国側にはジュラール大森林の―――」
「ふうん。とりあえず三人の男ね。情報ありがとう」
カミーラは頭を小さく下げた。
小汚い男は疑問に思うことがありカミーラに尋ねる。
「でも、城塞都市になんのようなんだ?わざわざ行く必要が――」
カミーラは口元に人差し指を立て微笑む。
「ヒ・ミ・ツよ」
カミーラはそれだけ言うと出口の方へ振り向き歩き始めた。
歩く姿はやはり美しいとばかりに周りの客を釘付けにする。
そうして店を出る。
「だいぶ急がなきゃね。ほんと無理なお願いだこと」
カミーラは美しい姿を隠すようにローブを羽織り、オルデスの眠らない人混みの中に消えていく。
人混みの中に少しだけ冷たい風が吹く。




