影2
彼女が入ったお店は【深い森】というオルデスにある大きな酒場一つだ。
建物自体はこの都市では新しい作りとなっている。この酒場は珍しい食材を扱う事で有名だ。客のほとんどが冒険者である。珍しい食材を一体どこから仕入れてくるのかそれは店主にしかわからないが、そんな小さなことなど客の中で気にする者はいない。店内は綺麗とはいかないが賑わいを見せている割には目に付く汚れなどは特にない。
彼女が店に入れば、さっそく酔いの回った客――冒険者に絡まれる。これにも慣れているのかという具合に一言だけ会話を交わすと、店主の元まで歩き始める。会話を交わされた客は青い顔をしているが酒場の賑わいにかき消されていく。店主に1杯だけ酒を頼み硬貨と黒い硬貨を渡す。店主は少しだけ黒い硬貨に目を向け、彼女に黒い硬貨と鍵を渡し、店の奥へと行くようにと指示を出した。彼女は店の奥へと入っていく。そして鍵を使い部屋に入る。そこは何も置かれていない殺風景な部屋だ。部屋中央に置かれた机と椅子以外は。彼女は椅子に座り再び黒い硬貨を取り出しそれを机にある窪みにはめる。すると彼女の体が光を発し部屋から姿を消した。
彼女が椅子に座ったまま姿を表すとそこは薄暗い部屋――黒い大きな長机、黒い椅子が6脚。そしてそれぞれに席につく者が。どうやら彼女が一番最後のようだ。彼女が席に付いたのを確認すると中央に座る男が口を開く。
「今回お前たちを集めたのは――――としてまずは城塞都市エルドラに落ちてもらう。ユーズには先手を打ってもらったがそれについては問題ないか?」
背丈は140ほど、街で遊んでいてもおかしくない。ここにいるのは間違いだろうか、まるで子供と言われても不思議ではない男――ユーズが答える。
「それがさー向かわせた二人組から中々連絡がないんだよね。べリアスの予測が外れることはないと思ってるんだけどね」
「‥べリアスの未来予知は今まで大いに役に立ってきた。心配はいらないと思うがもう一度念の為に――」
二人から信用を置かれている。身長150センチほど。華奢な体型をしている。胸もお尻もまだ育っていない。両目は金色をしている。
そんな長い黒髪の少女――べリアスが男の指示に従おうとする。
だがユーズがそれを遮る。
「ボスそれは大丈夫かな。念のためにさらに僕の最新作を送っといたから。戦争が始まれば血の匂いで溢れるから否が応でもそこに向かうよ。そうなれば帝国は引くだけさ。王国がそのまま城塞都市を守るように相手しなければならない。グレイシアの予測通りにあの王国騎士の副団長の考えそうなことは全て潰すよ。元々負け戦の王国は全てを潰されてさらに――」
「―――なら戦争が始まるのを待つだけだ」
身長200センチほど男。筋骨隆々であり目つきが悪く口調も悪い。口からは長い牙が2本飛び出ており目の前に現れたらその全体から威圧を感じるのも仕方ないだろう。背中には禍々しい羽も生えている。そして1番の特徴はなんと言っても4本腕だろう。それぞれ違う肌の色をしている。
4本腕の男――ゾルダが机を強く叩く。
「ボス!そんなことしなくても俺が行けば終わる話だろ?俺が行って帝国と王国、両方共皆殺ししてやるよ!はえー話だろ?」
最後に席に付いた女――カミーラが小さな声で言う。
「貴方馬鹿ね」
その声を聞き逃さなかったゾルダが怒声を――
「あ?カミーラ、お前の両腕切り落として俺の女にすんぞ」
「貴方じゃ無理よ。それに強い男にしか興味ないから私」
「あ?ぶち殺すぞ!テメーが俺に勝てると思ってんのか」
「当たり前じゃない。脳みそがないんですもの。そんなのに私が負ける訳がないわよ」
「テメェー!」
怒りと共にゾルダは再び机を叩き、殺気を周囲に撒き散らした。




